このところ世界中でテロ騒動が勃発している。南仏ニースで多数の死者を出して以来、これまで移民の受け入れに寛容だったドイツで、18日アフガニスタン系の若者が走行中の列車内でナイフを振り回して乗客を傷つけ警察に射殺された。これに続いて昨日同じドイツのミュンヘン市内のショッピングセンターで凶悪なテロ事件が起きた。イランとドイツ2カ国の国籍を有する18歳の若者が銃を乱射して9人を殺害し、その後犯人は自殺した。殺された9人の内8人が20歳以下の少年だったという。まだ犯人がISと直接的な関係を示す証拠は見つかっていないようだが、犯人の部屋から銃に関する本が見つかったり、2011年にノルウェーで77人が銃乱射で犠牲になった事件の犯人に強い影響を受けていたというから、今後の捜査次第ではイスラム過激派と何らかの関係や影響が分かるかも知れない。
そして昨日今度は集団テロ発生の本家ともいうべきタリバーンの巣窟であるアフガニスタンの首都カブールで自爆テロが起き、80人が死亡した。直ちにタリバーンは関与を否定し、同時にこのテロを非難する声明を出した。
今年になってから中東、ヨーロッパ内におけるテロが目につくようになってきたが、遂に安全地帯と言われていたヨーロッパのドイツ、アジアのバングラデッシュ、アフガニスタンにまでテロの矛先が向けられるようになってきた。
リオ・オリンピック開催をまじかに控えてブラジルでもオリンピック開催中にテロ計画を準備していたとして公安当局は10名のテロ予備軍を逮捕した。こうなると大きなイベントが開催される都市では、治安の確保に気を許すことができないし、今後この種のビッグイベント開催を忌避する動きが現れてこないとも限らない。4年後の東京オリンピックを控えてわが治安当局も、じっくりテロ防止対策を講じているようだが、心配の種は尽きない。実際嫌な世の中になってきたものである。
さて、喜ばしいニュースもあった。昨日プロ野球・広島カープの黒田博樹投手が投手として日米通算200勝の金字塔を打ち樹てたのである。日本球界では25人目の偉業である。黒田は昨年アメリカ・大リーグの再契約を敢えて断って古巣広島へ戻り、最後の野球人生を広島で全うする決意を固めた。黒田の200勝利の中には大リーグで勝った79勝が含まれているが、日本野球界では実力が上回る大リーグの成績をそのまま通算記録として受け入れ認めている。
今話題になっているのは、大リーグで活躍中のイチロー選手の記録である。彼の場合は、日本よりアメリカの在籍年数が長くなり、アメリカでの実績を日本で偉大な記録として評価しているが、一方で野球の聖地アメリカでは日本の記録を高校野球程度にしか評価せず、日米通算記録はアメリカでは意味をなさない。その最たるものは、イチローの日米通算安打数が、アメリカ球界で最多安打4256本を放ったピート・ローズ選手の記録を上回っても、ピート・ローズ自身はもちろん、大リーグ機構もそれを認めるわけではない。特に記録を破られたローズ選手の反応は冷たかった。それでもイチローは、冷静に受け止め、今では大リーグ通算3000本安打を目標に一歩一歩近づいている。数日内にクリアするに違いない。これならすべて大リーグで達成した記録であり、アメリカでも称賛されようとも見下されるようなことはあるまい。
イチローは黒田200勝達成を知り、早速「日米合算なんて俺は認めない! おめでとう」と冗談めかした洒落た表現で祝福を贈った。八百長試合を組んで大リーグ機構や、野球殿堂から追放され、イチロー選手の記録を過小評価しているピート選手よりずっと味のあるパフォーマンスではないだろうか。
イチロー選手にしても1日でも早く3000本ヒットを打って、アメリカ人ファンにも「文句あっか?」と言ってみてはどうか。残りあと4本である。