アメリカやオーストラリア、ヨーロッパに次いで、話題のスマホゲーム「Pokemon GO」が、日本でも配信開始されたことにより遊べるようになった。すでに欧米など35カ国ではウナギ上りの人気を博して、大きな注目を集めて市場を席巻しているようだ。このブームが異常なのは、このスマホ画面の中にポケモンと称するキャラクターが入り込み、それにスマホ内の武器のようなもので命中させると点数を稼げるというようなゲームで、街のどこでも現実と幻想の世界を交錯させて遊ぶことができるようだ。この商品が欧米では爆発的に売れて、日本でも熱心なファンが配信開始はいつかいつかと待ち焦がれていたのである。これを製作したゲームメーカーの任天堂は、このところ7年連続で減収だったが、ポケモン人気で株価も一気に上がり、大受けに入っているらしい。
ただ、最も心配される点は、これをプレイする人には画面の外のことがあまり目に入らなくなって、外の異物と衝突したり、それが事故につながることである。すでに外国では崖から落ちたとか、他人の敷地へ無断で入って発砲されたとか、車と衝突したような事故が頻発している。いずれ大事故につながるようなトラブルが発生するのではないかと気にかかる。昨日の配信開始を前に政府機関が遊び方に注意するよう異例の広報を行う前代未聞のニュースもあった。榊原経団連会長のような経済界のトップでさえ、日本発のコンテンツが海外でヒットしているのは日本の経済界としても喜ばしく、消費の拡大につながると有頂天の心境のようだが、最も懸念される事故防止にはとんとお構いなしである。いずれ近々大きな事故の発生が予想されるが、それに対する取り組みはまだ考えられていないようだ。
朝日新聞記者が実験的に銀座でトライして、ポケモンと追いかけっこをしたら目の前に赤信号があったという。子どもにも人気が出そうなオモチャだが、大きな事故、それも子どもたちに取返しのつかない事故が起きてからでは遅いと思う。他人に構わず「そこのけ!そこのけ!お馬が通る」とばかり突き進むゲームは、まるで他人を無視しているようなゲームだ。それに熱中するとは世の中が少しおかしくなっているのではないだろうか。
今やロシア・スポーツ選手のドーピング隠蔽工作、中国の南シナ海における無法、アメリカの共和党大統領候補者ドナルド・トランプ氏の我が物顔の言動などもこの種のポケモン騒動に一脈通じるものがあるような気がしてならない。任天堂には悪いが、どうして、こんなものを開発するようになったのだろうか。