今日の多摩美大の講座は、ケルト人文化に関する幅広い内容だった。講師は鶴岡真弓・同大教授で、ダブリン大学トリニティ・カレッジに留学されたこともあり、ケルトの歴史、美術、音楽、文学に造詣が深い。中々おしゃれな先生で、講義中もベレー帽を被ったままで洒落たシャツをお召しだった。やはり美大の先生ともなるとセンスの良い身だしなみが必要なのかな? アイルランドの歌姫と云われるエンヤと映画に出演したこともある、ハーフの顔立ちをした美人講師である。NHKのラジオ番組にもしばしば出られているようだし、お話では10月には作家・山崎豊子氏とクロアチアを歩いた番組がフジTVから放映されるという。話すことがいっぱいあって、予定の講義時間を20分も超過した。
専門家らしく深味のある内容をサービス精神たっぷりに話してくれた。アイルランドはヨーロッパの中でも少々異質なケルト人国家で、イギリスに虐げられてきた歴史に、あらゆる文化面と生活面にその特徴が表れているという。ケルト文明はアイルランドから始まってオリエント方面へ移り、黒海、ウクライナまで辿ることが出来るという。
1992年にダブリン郊外のダン・レエラ市内で学校訪問をした時には、ケルト語の発音に悩まされたことがある。ケルト語の名前がアイルランド人に尋ねても明確な答えがなく、その当人に聞かないと発音が分らないことが何度かあった。
鶴岡講師によると、国土が地勢的に大英帝国ににじり寄られていて、アイルランドにとってイギリスは不在地主のような存在だとか。特徴的な例として、アイリッシュ・ダンスをビデオで見せてくれたが、男女とも上半身は硬直してまったく動かさず、飛び跳ねるようにして下半身をジャンプさせながらタップする。上半身はイギリスに対する姿勢で、下半身がアイルランド本来のものだとは、言われてみてなるほどと思った。このタップがスペインのフラメンコとなり、世界中に広がっていったというからダップ・ダンスのルーツはケルトなのだ。
もうひとつ、個性的なケルト文様について話された。渦巻状に巻かれたデザインで、聖書の表紙にも使用されている。アイルランドには、聖書として「ケルズの書」と「ダロウの書」があるが、いずれもその表紙はケルト文様である。
アイルランドはノーベル文学賞作家を数多く輩出しているが、ジェームス・ジョイス、オスカー・ワイルド、ジョナサン・スウィフトら文豪のほかに、小泉八雲がアイリッシュだったとは知らなかった。講師によると八雲の描く海辺と幽霊の世界は、アイルランドの海のイメージに共通しているらしい。
いずれにしても、珍しい内容で中々興味を起こさせるテーマだった。
今日は沖縄戦から65年目の沖縄慰霊の日である。激しい地上戦で約20万人の住民が亡くなられた。菅首相も横路衆議院議長、江田参議院議長とともに、沖縄全戦没者追悼式に参列した。普天間基地移設を辺野古へ決めたことで沖縄県民を裏切ったこともあり、慰霊祭でのメッセージも記者会見でも慎重に言葉を選んで話しているところに申し訳ない気持ちが表われているようだった。
しかし、基地移設問題はこれからが正念場である。どうやって民主党政権は沖縄県民を納得させようとするのだろうか。