1190.2010年8月16日(月) これから戦没者遺骨収集をどう進めるのか。

 大東亜戦争中に海外で戦死した旧日本軍兵士のご遺骨は、今も100万柱以上が海外に眠ったままになっている。厚生労働省では毎年戦地へ遺骨収集団を派遣しているが、年々収骨作業は困難になり、収容数も減少の一途である。

 1973年以来20年近く旧厚生省・中部太平洋戦没者遺骨収集事業に携わってきた経験上から戦没者のご遺骨を収集するのは、年々難しくなっているということを実感する。日本側に当時の状況を知る人が年々少なくなっているのと同じように、海外各地で日本軍の行動や生活について知っていた現地の人たちがほとんどいなくなったことも大きく影響している。外地の人里離れたジャングルや、山地では現地の人の案内を請わなくては、思うように戦没地へ入ることが叶わないからである。

 例えば、フィリッピンでは51万8千人の戦没者のうち、約37万3千人のご遺骨が帰還していない。これは、軍がフィリッピンの山奥深く進軍したために山野に展開した作戦で部隊がちりじりになり、戦後も現地のゲリラ部隊の潜伏などで接近出来ないという事情もある。

 ビルマのインパールやコヒマのように、高山のジャングル地帯では平時でも入るのは難儀である。とても収骨することは難しく、しかも現在のビルマの政情不安を考えると現状では不可能に近い。年々遺族も少なくなり、厚労省や遺族会も焦っているが、現実的に状況は益々厳しくなっている。

 ある程度実情を知っている立場からすれば、収骨数というのは、数え方がマチマチなので、正確な数にはなりにくい。特に戦没地の事情によって数え方も異なるので、実態とは多少合わない点もあることは承知しておいた方がいい。

 政府は遺族がもういつまでも待てない状況に鑑みて、このまま座視しているわけにはいかない。実際には10年や20年の間にすべてのご遺骨を母国へ奉還することは不可能に近いことを直視すべきである。それなら、せめて気持ちのうえで遺族が折り合える対応を考えるべきである。ひとつの方法としては、希望する遺族には毎年8月15日に戦没地近くで慰霊追悼式を行い、気持ちを慰めてもらうことである。

 いくら形として追悼式で式辞を述べても、本当の気持ちは伝わらない。民主党は昨年の政策集で、無宗教の新たな国立追悼施設を設置する方針を明記したはずである。にも拘わらず、菅首相は「今すぐどうという結論ではなく、党内外の議論のあり方を見ていきたい」とのんびりとしていて冷たい。

 さて、夕方先日に続いて朝日の別の記者から、改めて海外旅行の安全について尋ねてきた。明日の特集で報道したいとのことだった。随分切羽詰まった特集だが、先日のように空振りに終らなければいいが・・・。

2010年8月16日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com