このところ世界中で政治的、社会的に騒がしい事件の頻発に些かうんざりしているところに、今度はスポーツ界で嫌悪すべき事件が起きた。ロシアが政府がらみでオリンピック出場選手のドーピングを行い、隠ぺいしていたと認定されたのである。極めて悪質である。世界反ドーピング機関(WADA)が、ロシアは多くのスポーツで5年間に亘り検体をすり替えるなどの手法でドーピングを隠していたと報告書で公表した。最近ではソチ冬季五輪ですり替えをやったことが明かされた。これに対してプーチン大統領は国ぐるみのドーピングとの指摘に対して、「スポーツをロシア国民のイメージを損なうための道具にしている」と批判している。だが、この問題に対してバッハIOC会長は、最も厳しい処分を科するとロシア選手のリオ・オリンピック出場停止の可能性を示唆した。
さて、これら海外の事件とは無関係に、国内関係でも些か異常なスケールの経済取引があった。いつもながら派手な話題を提供するソフトバンクの孫正義社長が、昨日ロンドンで企業買収を発表したのである。それは並外れた巨額の買収であり、その金額たるや、何と3兆3千億円というのだから唖然とするばかりである。リビアやモロッコ、ナイジェリアなどアフリカ諸国の1年間の国家予算に匹敵する金額である。日本企業による海外企業のM&Aでは過去最大規模だという。買収した相手企業とはイギリスの半導体設計大手アーム・ホールディングス社で、私は知らなかったがスマホ用CPU(中央演算処理装置)や通信用半導体の回路設計図で9割超のシェアを占める独占企業だという。昨年の同社売上高に占める純利益が35%という高収益企業である。それだけの独占安定企業が、買収されてしまうというのも俄かには信じ難いが、とにかく孫社長の破天荒な行動力には敬服するばかりである。
孫社長は、昨年副社長として招いたニケシュ・アローラ氏に80億円の報酬を支払い、大きな話題を提供した。いずれ社長のポストを譲るのかと思ったところ、先月末になって突然アローラ氏と孫社長との確執が表面化してアローラ氏はソフトバンクを去ることになった。あまりにも唐突でドラマチックな展開に周囲は呆気に取られるばかりである。
ともかく孫社長が自ら勇断を振るったということだと思う。とても普通人が理解できるような舞台回しではないが、昨日から今日にかけて世界中の経済界、証券業界を挙げて煙に巻いている。日本もこういう個性的な起業家が登場する時代環境になったということだろうか。
この次に孫社長が話題になるのは、いつ、いかなるテーマであろうか。