3352.2016年7月17日(日) 国立西洋美術館、世界文化遺産登録へ

 トルコの一部軍勢力による決起は瞬く間に鎮圧されてしまった。市民を含めて政府軍・反政府軍を合せて290人以上が死亡し、軍司令官ら反乱軍の将校の他に裁判官と検察官ら7,500人の身柄を拘束して一段落した。

 今回クーデターが試みられたのは、これまでとかく強権的なエルドアン大統領に不満を抱いていた一部の軍幹部が立ち上がったが、先制攻撃も虚しく失敗に終わった。この鎮圧でエルドアン大統領は自信を深め益々強気になるだろう。不満分子の背後に、アメリカに亡命中のイスラム教指導者・ギュレン師がいたと大統領は彼を非難し、身柄を引き渡すようアメリカに要求した。

 トルコは観光立国として繁栄し、また親日的な国として日本人観光客も数多く訪れるが、近年治安上の不安が脳裏を横切り、観光客の姿も減少しつつある。私もトルコへは4回ほど訪れていろいろ楽しい経験や、危ない体験もした。最も際どかったのは、翌日トロイ遺跡を見学すべくチャナッカレに滞在中の1999年8月17日、明け方に発生したイズミット地震と呼ばれるトルコ北西部大地震に遭遇した時だった。20世紀最後の大地震と言われただけあって、M7.6の震度で、死者は1万7千人と言われているが、実際には死者、行方不明者を合せて4万5千人と言われている。その大きな揺れに一面怖い体験と同時に、イスラム建築の堅牢なモスクと実用的な伝統的絨毯に感銘を受けたことも事実である。街で出会った人々も親切だったし、特に子供たちが人懐こく可愛かったことを思い出す。

 それが、今のトルコ政府は大統領以下政府要人らが皆強面で、トルコ人らしい優しさが表面に表れてこない。つまりトルコらしからぬ国家を作り上げ引っ張っているのだ。国境周辺にISやクルド民族を抱えて地勢的に難しいシチュエーションにあり、国の舵取りは難しいとは思うが、何でも強引に封じ込んでしまう現在の強権エルドアン流儀は、少し考えを変えた方が良いのではないかと思う。地下に溜まった伏流水は、いずれまた地上に噴き出してくることは間違いない。

 ところで、このクーデター騒ぎで延期されていたユネスコ・世界遺産委員会で、日本の候補として挙がっていた「ル・コルビュジェの建築作品・国立西洋美術館」の建物が、1日遅れで世界文化遺産に登録されることに決まった。日本の世界遺産はこれで20件目である。

2016年7月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com