昨日と今日の2日間太宰治の「斜陽」を読んだ。昨年は太宰の生誕100年に当たり各種の催しが太宰の出身地・津軽金木町を中心に各地で開かれたが、恥ずかしながら「人間失格」以外太宰作品はまったく読んでいなかった。解説に文芸評論家だった奥野健男氏が、「ヴィヨンの妻」を勧めていたので、午後自由が丘へ行った序でに書店で新潮文庫の「グッド・バイ」と「ヴィヨンの妻」を買い求めた。自殺未遂を2回、その後に心中をやってのけたハチャメチャな人生を送った太宰だけにすべてが型破りで、われわれには考えられないストーリーを書き上げる太宰作品は、筆遣いはやわらかいが強烈なパンチを効かせる。
ほかに日経が出した「梅棹忠夫 語る」と久しぶりに「ラグビーマガジン」11月号も購入した。前者は、先日読んだ「山をたのしむ」(山と渓谷社)と同じように梅棹先生に小山修三氏が聞き手となって、広い分野で功績を残された梅棹先生と四方山話をしながら梅棹哲学の片鱗と梅棹語録を聞き出そうというものだ。後者は高校ラグビー部の後輩、栗原大介くんが始まったばかりの関東大学対抗ラグビー戦に慶大ラグビー部の期待の星としてグラビア付きで取り上げられているので、期待を込めて買い求めたものである。
さて、わけの分からない隣国・北朝鮮で今日44年ぶりに北朝鮮労働党代表者会と党中央委員会総会が開かれ、噂通り金正日総書記の3男キム・ジョンウンが朝鮮人民軍の「大将」、そして中央軍事委員会副委員長として正式にお披露目された。先に人民軍の肩書きで紹介されたところが一風変わっている。「先軍政治」として北で一番力を持っている軍部をバックに国際社会に名乗り出たというところであろう。これでジョンウンの地位を公式に発表、周知させたので、今後は彼の支援態勢を固めたうえで、着々と禅譲の方向へ動いていくのだろう。
しかし、それにしてもこの人事には相変わらずカリスマ的な秘密性が漂っている。金正日総書記の3男であること以外は年齢や現在に至るまでの昇進過程もはっきり公表されず、突然のように国家のリーダー・グループの一翼を担うポジションに就くことになった。30歳にもならない経験もあまりないような若者が、あの複雑な国家体制、しかも経済破綻の国で一足飛びに最高権力者に近い地位に祭り上げられて、果たして指導者としてやっていけるのだろうか。社会主義国家としてはあってはならないことだが、北朝鮮はこれで金日成以来3代連続して世襲後継者が国の舵取りを担うことになる。
この国はどこまでこういう不透明な国家体制を続けていくのだろうか。国際的に多事多難な中にあって、あまりにも経験のない若者が権力を握ったときには、「裸の王様」となって悲哀を舐めるのは国民である。金王朝は内外の危機に直面して表面的には一見きしみが見られないようだが、いずれ王朝が倒壊する危険をはらんでいるように思う。