劉暁波氏のノーベル平和賞受賞が大きな波紋を呼んでいる。やはりと言うべきであろうか中国政府が強く反発している。中国政府は自国の権威と実力の評価を高めてくれると考え、近年ノーベル賞受賞を強く渇望していた。あれだけの人口を抱えながら、過去に中国在住の中国人でノーベル賞を受賞した人はいなかった。国際ペン大会のため来日したノーベル賞作家の高行健氏にしても母国を離れ、今ではフランス国籍を取得しているし、チベット仏教最高指導者・ダライ・ラマ14世にしても中国を追われ、海外生活が長い。それが今回は中国在住者で正真正銘の中国人であるが、劉氏の言動が政府のお気に召さず、劉氏は刑務所に収監されたままである。
中国政府はノーベル賞をいただきたいが、それは中国にとって都合が良い形でという条件付だったのである。胡錦祷・国家主席に授与されるなら大歓迎だっただろう。況や自国にとって犯罪行為を行ったと断定した人物に、外国が彼らの基準で国際的評価を下すというのは、へそ曲がりの中国にとっては内政干渉であり、許し難いと捉えているようである。
案の定海外における中国の評判は中国にとって頗る芳しくない。今回の非常識なパフォーマンスは国際社会における中国の信用を著しく低下させるものである。昨年の平和賞受賞者はアメリカのオバマ大統領だったが、そのオバマ氏が即座に中国政府に対して拘束中の劉氏を釈放するよう呼びかけた。ほかにも民主化運動の活動家たちが中国政府に身柄の解放を求めている。
毅然としているのは、トールビョルン・ヤーグラン・ノーベル平和賞選考委員長である。平和賞を授与した最大の理由は、民主主義と人権が世界平和には不可欠だからと語った。更に中国は大国として批判や監視、議論の対象になる責任を引き受けなければならないとも述べた。当然のことである。中国はいつまで経っても利己的な自己主張ばかりして、他国のことをまったく配慮しない。まるで駄々っ子だ。再三にわたる中国政府の嫌がらせや圧力に対して、委員会は政府から独立した組織であり、まったく考慮していないと一顧だにしていない。
それにしても今回の劉氏への平和賞授与は、世界的に大きな関心事となったのであろう。ウェブサイトを見ても新しい書き込みが随所に見られる。それだけ日本でも多くの人々の関心を呼んでいるのだろう。反って中国が早く目覚めるきっかけになるかも知れない。
ところでワシントンD.C.で開催されたG7で世界的な通貨安戦争について議論が交わされたが、結局中国政府の対応が焦点で、人民元の切り上げを促す姿勢で参加各国は意見の一致を見た。今や世界は偏屈国家中国のつむじ風に席捲されている。その中で先日中国において逮捕されたフジタ社員4人のうち、ただ1人拘束されたままだった社員が、やっと今日解放された。