尖閣諸島沖の中国漁船衝突のビデオ流出が政治問題化して流出した犯人探しが始まり、国家機密漏洩罪の疑いで検察が石垣海上保安部を家宅捜索していたところ、犯人が名乗り出て急転直下1件落着となった。ただ、獅子身中の虫と言おうか、身内の海上保安官が上司に告白したとあっては、あまりにも危機管理が甘い。
これを受けて今日1日中国会、国土建設省、海上保安庁、検察庁が上へ下への大騒ぎである。
一方で、今日からAPEC閣僚会議が始まった。今国内で最ももめているのは、TPP(環太平洋連携協定)に日本が参加するかどうかという問題であり、今もって結論が出ていない。
確か今国会における菅首相の冒頭演説では「参加」と明言したが、ここへ来て無条件で自由関税という1項が、第1次産業の農業・漁業従事者から死活問題であると猛烈な反発を買い、締結に賛成する経済界との板ばさみになった政治家の態度が煮えきらず、結論を先延ばしにしているからである。玉虫色の大好きな民主党政権は、来年6月までに参加すべきかどうかの結論を出すべく検討するという外国人には理解しにくい、のんびりした方針を固めつつあるようだ。
だが、その頃までに腰が据わらず、強力なリーダーシップを発揮出来ない政府が、本当にわが国の貿易政策を決められるのか。牛肉などを売り込もうとしているアメリカ政府からは、日本が同盟に参加することを求めるアプローチがあるが、果たしてどうか。
さて、このところ駒沢大学の清田義昭講師の裁判制度に関する講義は、専門的になり面白くなってきた。今日はNNN系テレビの「法服の枷」というビデオを観賞して、その後に解説を伺い、意見を交換した。同ビデオが訴えているのは、裁判所内における裁判官の立場が裁判官は理想とする正義、真実究明を果たして履行出来ているのかとの疑問である。憲法違反との判決を下した長沼ナイキ訴訟で有名になった福島茂雄・元裁判官が克明に記した日記から、真摯に法の裁きに向き合う裁判官の悩みを、いくつかの他の裁判官の実例を交えながら紹介している。実際福島氏自身もナイキ訴訟の直後に、上司平賀所長から平賀書簡を受け取り、高裁長官からは口頭注意処分を受けている。一度は辞表まで提出し、その後撤回するという苦渋も味わっている。
一見裁判官は何者にも冒されず、信念に基づいて判決を下していると思われがちだが、実際には「外に向かっては聖職で内では労働者であり、黙々と働き搾取され追われて行く」との福島元裁判官の日記に記された文言はあまりにも寂しく虚しい。「どの裁判官も良心と保身の狭間で悩んでいる」「裁判官は事件の清掃人」と他の裁判官も自嘲気味に述べている。
実際福島氏は、裁判官は自衛隊とか、憲法第9条などに関して国の意向に反した判決を下すことは、将来を棒に振ることだという。上司から内々の圧力がかかり、もし逆らえば左遷が待っている。
結局裁判官も司法官僚と言われ、国の方針や上司には逆らえない。その意味ではわが国では、3権分立は現実的には難しい。あまり関心を持っていなかったが、わが国では司法が立法、行政の下に位置しているということを改めて思い知らされた。