今日駒沢大学で大泉克郎講師による「高度情報社会のメディア論」講義開始前に、受講者のひとり、須田修一さんが大泉講師に「週刊新潮」を手渡していたが、講義の冒頭に講師がその週刊誌の記事について説明と解説をされた。
今日発売された「週刊新潮」11月25日号に、「『ナベツネ』と『氏家』を大批判した日テレの元政治部長」というタイトルで、「日テレ・元政治部長」菱山郁朗講師に関する記事が3頁に亘ってセンセーショナルに取り上げられている。併せて菱山氏の写真も掲載されている。菱山論文が記載された「駒沢大学マス・コミュニケーション研究所」発行の研究所2009年報の写真まではっきり掲載されている。
実は、先日やはり日テレの元部長だった大泉講師からこの年報をいただいたところである。
「週刊新潮」の記事というのはこういうことのようだ。菱山氏が、研究所年報に「ナベツネ」こと、読売グループ総帥・渡辺恒雄会長と日本テレビ・氏家斉一郎会長のワンマン的言動と読売グループ内に充満する2人の強烈な存在感を非難する論文を寄稿した。それが読売・日テレの首脳陣の怒りを買ったらしい。その論文とは「メディア権力の研究」と題するもので、菱山氏が日テレ在職中に取材したドキュメント番組の社内の見方や評価について、氏の視点で書いたものだ。リクルート事件当時、検察捜査が政治家にまで及んだが、菱山氏はリクルート社が社会党・楢崎弥之助代議士に賄賂を手渡そうとする現場を隠し撮りして話題になった。だが、当時の読売グループ首脳陣は隠し撮りビデオが自民党幹部、特に中曽根氏、竹下氏らに捜査の手が及ぶことを懸念して、そのスクープ的取材手法を批判したことを菱山氏は論文の中で不条理で納得出来ないとの感情を吐露し、同時に高齢にも関わらず渡辺、及び氏家両氏が読売グループ内に鉄壁の備えをして君臨し、隠然たる権力を行使している古い体質を堂々と批判した。
恐らくそれが大方の読売グループ社員の本音だったのではないだろうか。だが、それは読売グループ首脳陣にとっては到底許せないことなのであろう。読売も日テレも菱山論文に対するコメントはしないとジャーナリズムらしからぬ逃げの姿勢に終始している。
記事の最後では菱山論文を引用し、「身体を張って日々取材活動を続けている大多数のジャーナリストにとって全く模範とはならないし、健全なジャーナリズムは育たない。むしろ2人はジャーナリストとしては失格であり、一日も早く後進に道を譲って引退すべきだ」と手厳しい。そして、記事は「2人が単なる後期高齢者に成る日。その日を待ち望んでいるのは、ひとり菱山氏だけではなかろう」と結んでいる。
菱山氏はすでに退職したとは言え、元読売グループ社員として中々思い切った行動をされたと思う。実は、先日私の共著を菱山氏へお送りした際、この論文は久しぶりに力を入れて書いたので、ぜひじっくり読んで欲しいとメールをもらったところである。
まだ、さらっと目を通した限りでは、事実をしっかり記述しているとの印象が強い。じっくり読んで感想を菱山氏へ書き送るつもりだ。実は、菱山氏から氏の12月14日の最終講義に、聴講と懇親会に参加しないかとお誘いがあったばかりである。残念ながら当日は飯田ゼミの忘年会があるので、出席出来ないが、近日中にお会いすることがあるならいろいろ話し合ってみたい。
それにしても、菱山氏は蛮勇をふるって行動した、気骨のある人だ。その勇気ある言動に敬意を表し、喝采したい。今度お会いした時、とくと話し合えるのが楽しみである。