昨日3つの県、沖縄、愛媛、和歌山で県知事選が行われた。その中で最も注目されたのは、言うまでもなく沖縄県知事選である。実質的には現職の仲井真弘多知事と前宜野湾市長の伊波洋一氏の2強の争いとなったが、僅かの票差で現職の仲井真氏が勝った。勝ったのはいいが、難問を抱える沖縄県政はこれからが正念場である。最大の争点だった基地問題、なかんずく普天間基地移設に関しては、仲井真知事は以前から県内移転も已むなしとしていたが、知事選直前になって県外移設へシフトした。これにより仲井真氏と伊波氏、両者の間に大きな争点がなくなり、現職で経済通の仲井真氏が当選した。政府の考えは日米合意に基づいてほぼ県内移設で固まっており、いかに沖縄県民に強いる犠牲が沖縄内外国民の同情を呼び、再び沖縄県民を戦争の犠牲になることに心情的なシンパシーがあっても、現状の米軍基地を沖縄から国内の他の土地へ移設することは、まず不可能に近いのではないだろうか。
最近の中国とのトラブル続きや、韓国ヨンピョン島砲撃事件などを見ていると、アメリカの核の傘の下にいる日本にとってアメリカは実に頼もしい存在であり、アメリカとの同盟を無視しては日本の安全は担保されないように見える。実際、クリントン国務長官が尖閣諸島は日米安保条約の枠内にあるとの「お墨付き」発言をした時の政府首脳の喜びようは、これが国のトップのありのままの姿なのかと、もう少し自制せよと言いたいくらい無邪気な騒ぎようだった。もっとアメリカの真意を探れと言いたい。アメリカは日米合意に基づいて、基地移転を速やかに進めて欲しいと日本政府に求めているのだ。それは、現在の普天間基地を辺野古へ移すということであり、現在の中国リスクが高まれば高まるほど、アメリカ軍の存在感とその必要性が高まる。もはや、アメリカ軍なしには、日本の安全保障は維持出来ないのっぴきならない状態に追い込まれているのである。
今米韓合同軍事演習に加わっている米原子力空母「ジョージ・ワシントン」は、母港横須賀から韓国へ向かった。この事実は、すでに日本は北朝鮮が狙いを定める照準内の標的となってしまったことを意味している。戦争が起これば、沖縄も横須賀も否応なしに巻き込まれるところへ来てしまっている。これでは、好むと好まざるとに関わらず、アメリカ軍の援護を必要とするのではないだろうか。
知事選が終れば、菅首相は新沖縄知事と即刻会いたいと早くからその意志を表明していた。だが、現時点ではいつ、どこで会うのかの公式発表もない。鳩山前首相が沖縄米軍基地問題について、優柔不断の末に裏切った判断をして失笑を買ってからまだ間もない。菅首相はどうやって沖縄県民の信頼を回復する手を打つつもりなのか。アメリカ政府の要求と沖縄県民の基地反対の声の狭間で、どういう結論を出そうというのか。毎度のことながら、今度も日本政府が一向に本音を表に出さないところから察すると、日本政府の考えはアメリカの要求をそのまま呑みにして、普天間米軍基地は海上の辺野古基地へ移設することになるのではないか。すでに他の選択肢はなくなっているように思えて仕方がない。
それにしても民主党政権の沖縄政策は、あまりにも無策と言わざるを得ない。