年に2回恒例行事となったゼミの赤松晋さんがチェロを演奏するアマチュア・オーケストラ「上野浅草フィルハーモニー管弦楽団」の定期演奏会がいつも通り浅草公会堂で開催された。
演奏曲目はベートーベン「交響曲第8番へ長調」とショスタコーヴィッチ「交響曲第5番ニ短調」で、いずれも私には馴染みのない作品だった。いつもこの定期演奏会で演奏されるのは、普段あまり聞き覚えのない曲目が多い。最後にアンコールで「仮面舞踏会」が演奏され、やっと知っている曲に出合った。クラシックを聞く機会はあまりないので、時折静かに耳を傾ける機会があるのは貴重である。
私も妻と出かけたが、夫人同伴のゼミ仲間が多く、全体で21人ほどの参加だった。終ってから幹事が予約してくれたレストラン「アリゾナ」で会食となったが、この店は生前永井荷風が好んで利用したところで、店内に荷風の写真が飾ってあり、店の主が複製ではあるが、荷風の作品「濹東綺譚」を見せてくれた。中々きれいで女性的な筆文字に加えて訂正箇所が朱文字で記入されているのが、パソコンでは感じられない味わいを出している。
それにしても赤松さんは相変わらず若い。80名ほどの団員の中で、最年長とのことだが、ステージを見ていると最年少といってもおかしくない。あまりわれわれが、この演奏会にかこつけた会合が楽しみだと赤松さんにプレッシャーをかけるので、辛くても止められないと笑いながらこぼしていた。
いつも感じるのだが、浅草界隈には独特の風情があり昔の下町情緒が残っている。昼食に入った日本蕎麦店「満留賀」は明治28年開業と書かれていたが、意外にも外人客がいくつか小さなグループ単位で入って来たのには驚いた。
いま話題の東京スカイツリーが一歩一歩完成へ向けて上空へ伸びていて、通行人も立ち止まっては見物している。確かに話題になるタワーであることには違いないが、出来れば首都・東京のシンボルとしては日本的な建物の方がずっとサマになるのではないか。私も近著「そこが知りたい 観光・都市・環境」の中で触れたが、その点では江戸城が往時の木造で復元されるようだともっと大勢の人々の関心を高めることだろう。
年に2度ではあるが、気持ちの通じあう仲間とコンサートを聴き、食事を楽しめることは幸せである。14日には、同じ仲間と下北沢で忘年会がある。