菅首相は仲井真弘多・沖縄県知事再選後、初めて沖縄を訪れ知事と会談した。予想通り会談は平行線のままで、結論はまた引き延ばされることになった。菅首相としては、5月の日米合意に基づいて普天間基地を辺野古へ移転する案を沖縄県が認めてくれるよう説得したが、基地県外移設をスローガンに掲げて再選された仲井真知事は頑として自説を譲らなかった。
この際菅首相の発言を聞いて「おや?」と思った。首相は「県内移設はベストではないが、ベターだと思う」と言ったのである。基地反対なので、ベターの筈がないではないか。会談を終えて、知事はやはりこの言葉に拘って「基地が沖縄にあることがバッドだ」と言った。菅首相はせめてこう言うべきだったのではないか。「最善の策がダメなら、次善の策を」である。これとてベター?ではないが、言葉としては誤解されることが少なくなる。菅首相は使うべき言葉のTPOを知らない。
昨日NHK昼番組「スタジオパーク」に珍しく旅行家・兼高かおるさんが出演された。御年80歳である。かつてTBS「兼高かおる世界の旅」を観ては外国に憧れ、ほぼ毎週のように楽しませてもらった。ソフトな語り口でさりげなく話題を聞き出してくれた故芥川隆行氏との名コンビぶりが愉しい番組だった。この番組は31年間も続いたそうだ。
久しぶりにお姿を拝見すると、お年は召しても相変わらず綺麗で、懐かしそうに昔のことを克明に話してくれる。この番組は外国へ憧れる若者にとって夢のような企画だった。多分あの頃からこの番組を通して私の海外志向が一層高揚したのではないかと思っている。確か高校生のころ80時間で航空機を乗り継いで早回り世界一周をされた。兼高さんによると映画「80日間世界一周」にあやかった企画に乗せられて世界旅行を楽しんだと仰っていた。
兼高さんは、世界150カ国を訪れ、地球を80周したそうだが、自分の足で歩いたわけではないと謙虚に仰っていた。だが、兼高さんのすごいところは、実際には企画に乗せられたばかりでなく、企画と一体となって、プログラムに行動的、挑戦的なトライをしながら番組作りに携わったことである。例えば、ボストンで空のスカイダイビングをやって見せてくれたり、氷の上の北極点へ舞い降りたり、海ではスキューバダイビングを実演したり、実に行動的で、今どきのかわい子ちゃんの平板的なリポーターぶりとは、行動力のみならず信念とか気合の入れ方が大分違うように思う。
スペインの天才画家サルバドーレ・ダリを訪ねた時の、今から50年以上も昔のフィルムを再現してくれたが、ダリの両先端が上へ跳ねたような個性的な髭は砂糖水で固めたなんてことは初めて知った。兼高さんの可愛らしい魅力にダリもつい心を許ししゃべってくれたのだろう。
兼高さんは住むなら、アメリカとヨーロッパが良いと仰っていたが、そのアメリカは自分が持っているものをすべて活用出来るようにしてくれる国だと言われた。同感である。そのうえで、若者に世界を見てみなさいと無言のメッセージを送ってくれた。今の内向き志向の若者に対するアドバイスであり、強いメッセージだと思う。
日本人は日本のことをもっと知るべきだと、ご自分の経験上から話された。海外の旅では、その国の人々と触れあい、その国の食事を楽しみ、荷物を少なくする、などと納得のいく話をしてくれた。そのうえで海外旅行は楽しいと旅のエッセンスで話を締めくくってくれた。
兼高さんの150カ国訪問と地球80周にはとても及ばないが、年齢を重ねても兼高さんのポジティブな姿勢と人生観から、現在71カ国と地球13周の私も少しでも多くのことを学んでいきたいと思っている。