年末の年中行事だが、来年度国家予算の決定に際して水面下で関係当局が虚々実々の駆け引きを行っているようだ。外交や政治を始め政局の動きも絡んで、中々前へ進まない点を心配していたが、役所は話をとっとと進めているらしい。
その中で2点ほど気になったことがある。ひとつは、民主党政府がマニフェストで約束したバラマキ政策が、未だに歳入のメドも立たない財源難のため実現の可能性が危ぶまれていることである。
来年度の一般会計の歳出は、今年度と同じ92兆円台と見られている。これを税収41兆円と国債発行44兆円を併せても、なお約7兆円が不足する計算である。この不足分を独法や特別会計の剰余金で賄う腹のようだ。ところが驚いたことに「出るわ、出るわ」、JN協会の松尾道彦理事長が総裁を務めていた鉄道建設・運輸施設整備支援機構から利益剰余金1.2兆円を始め、財政投融資特別会計から1兆円、外為資金特別会計から3兆円の剰余金を税外収入として計上するという。国はあっちからも、こっちからもいざとなれば、いくらでも剰余金をかき集められるシステムになっているようだ。「国家の制服」にはない筈の袖がいくつも付いているのだ。どうしてこれだけの大金が不透明なまま埋蔵金として眠っていて、国民の前に公表されないのだろうか。言ってみれば「隠し資産」のようなものではないか。かつて学生時代に法政大学へ出かけて大内兵衛教授の講義を受講したことがあるが、その時大内教授は財政投融資を表に出せない「めかけ」のような存在と手厳しく糾弾していたが、なるほどと思う。
もうひとつ注目したのは、「日本復活特別枠」というおひねりを作り出したことである。これは来年度予算編成で成長戦略やマニフェスト関連施策を実現するために特別に設けた予算の枠だという。まったく国の手にかかったら何でもありなのだ。しかも当初想定を上回る2.1兆円にも達するという。
そのどちらも国民のほとんどがその決定の経緯と中身を知らないと思う。在日米軍の駐留経費の日本側負担額などもこの中に含まれるらしい。どうも国民の知らないところで、物事が決定されていく。民主党政権になって戦時中の翼賛体制傾向が強まっているようだ。危険!危険!
財政悪化と経済成長の弱さが影響して日本の格付けも下がる一方である。大手格付け会社、アメリカのS&P社の格付けによると日本は信用度の低下したスペインと同格の「AA(弱含み)」に置かれている。更に同社は日本の社会保障費が高齢化に伴って増え続けた場合、国債の格付けを現在のダブルAから更に引き下げる可能性を匂わせている。日本の出来の悪い政治家たちの行う政治ごっこが、外から危ないと見られているのだ。どうしてこういう政治家をわれわれは選んでしまったのだろうか。「田園の憂鬱」ならぬ「日本の憂鬱」である。