「選択」1月号によると今後世界の石油市場が変わるかもしれないという。それを象徴するエポックメークな現象がアメリカで現実化しつつあるようだ。北米大陸の砂岩からタイト・オイルが採掘出来そうだという。これまで石油と言えば、中東地域の砂漠における掘削や、昨年メキシコ湾で火災が発生した海底油田に象徴される。だが、海底油田の開発には巨額の費用と長い年月がかかるうえに事故の心配が大きくなった。砂漠から得られる石油については、カタールが「世界に天然ガスを安定供給できる国はカタールしかない」と胸を張り、売り手市場をよいことに国際石油価格を手玉に取るほど中東諸国の独壇場だった。ところがアメリカで新たにタイト・オイルの実用化が現実味を増してきたことにより、産油国である中東諸国とロシア国内では、今までのように売り手市場を有利に利用出来る機会が減少するのではないかと胸の内は穏やかではない。
では、このタイト・オイルとは一体何だ?日本人でもあまり気付いている人はいないらしいが、硬く固まった砂岩(タイト・サンド)の中から石油を取り出すらしい。そして、その埋蔵量は在来型石油の5倍以上もあり、その埋蔵場所も北米大陸に偏在しているというから、アメリカにとっては願ったり叶ったりだ。また、この非在来型石油の台頭が世界の産油国勢力図を一変させようとしていることで、これまでの産油金満国や、アフリカに広く資源獲得外交を行い石油掘削工事に熱心な中国をドキリとさせている。
現在石油の消費は毎年着実に増え、その供給は産油国の外交カードにも使われているほどである。世界最大の石油消費国であるアメリカに、新たな石油資源が発見されたとするなら、アメリカは追い縋ろうとする中国を始め、ロシアや石油産油国をぶっちぎってダントツで世界に君臨するようになるだろう。
中国を始めとする各国のガソリン車の販売台数の伸びを見ると、石油市場の活性化は疑問の余地もなく、日量の消費は1億バレルに達するが、一方で地球温暖化や再生可能エネルギーの普及によって脱石油政策が進み、日量9千万バレルに抑えられるとの声もある。
タイト・オイルは、アメリカが2011年を世界最大の産油国として復活する年になるテコになるだろうとも推測されている。
大きなお世話かもしれないが、働かずとも現金が手に入り「濡れ手に粟」でがめつい中東産油国や、アフリカ大地を石油の採掘権獲得により引っ掻き回している中国、など成金国家にきついお灸を据える意味ではアメリカのこの新しい石油開発は効果的だと思う。そもそも石油消費自体があまり地球生存のためには好ましくない観点から考えれば、とりあえず豊かなアメリカに石油が採れるメドが立ったということは、無秩序な石油開発に警鐘を与えてくれるのではないかと、むしろ喜ばしいことだと思考するがいかがなものだろうか。