一昨日行われた愛知県の3つの選挙の投票結果が新しい地域住民の行動パターンを変えるのではないかと注目されている。3つの選挙とは、県知事選、名古屋市長選、市議会解散の是非を問う住民投票で、知事には自民党を離党した大村秀章氏が圧勝し、名古屋市長選では持論を訴え、つい最近辞職したばかりの河村たかし氏が圧勝した。両氏とも党派を超えた無党派層を結集し、民主党と自民党候補者を大差で破った。もうひとつの名古屋市議会の解散についても市民が下した結論は、河村氏の望む解散だった。
前々から危惧していた、政治の空白と過大な出費に関してはあまり話題になっておらず、むしろ名古屋市民が既成政党の常識や政党論理に捉われなかったことを評価するマス・メディアの論調が目立つ。知事選と市長選の結果は、敗北した民主党、自民党にとって深刻な問題を提起した。今年4月全国各地で行われる統一地方選では、愛知の結果がどれほど自営に影響されるのかを測りかねているのだ。
トップの座に誰が就こうと、自治体としては住民が安定した生活を送れるよう智恵を絞るのが最大の責務であり、名古屋市長選のように度重なる選挙で時間の空白を作るようでは本旨に悖ると考えている。河村新市長には自分の意見を住民に訴え、持論を通すのは了としても名古屋市民のために、どれほど粉骨砕身の努力を払い、市民を納得させられるかということが原理である。
因みに元島根県知事だった片山善博総務相は「河村流は邪道。行政改革を一所懸命にやり、自治体が抱える巨額債務を減らす方に振り向ける。巨額債務があるのに減税するのは、長期的な財政運営の観点からいかがなものか」と河村氏の訴える市民税減税に手厳しいコメントを述べている。河村氏の人気取りの個人的パフォーマンスと捉えているのだ。
さて、昨年来メドベージェフ首相以下ロシア首脳が度々北方4島を視察して、国ぐるみで実行支配を固めつつことに対し、昨日菅首相は許し難い暴挙と発言した。これにロシア政府は即座に「北方領土の主権を見直すことはない」と反論した。ロシアがどう自己主張しようと、北方領土が日本の領土であることは歴史的にも1855年に締結された日露通交条約でも明確に証明されている。ロシアは第2次世界大戦の戦利品という解釈であるが、それはロシアの一方的な言い分で、国際的にも通らない論理だ。
問題は、日本政府がこれまで一言もロシアに対して日本の正当性のある論理をぶつけてこなかった点である。ここにも日本外交の弱さがある。これからはただ自国の領土だと主張するだけでなく、国際社会に向かって論理的に説明し、共鳴者、同調者を増やす努力を続けていくべきではないだろうか。その点で政治家の責任は重い。いつまでも国会内で与野党が喧嘩をやっている場合ではない。