いつのころからか聖バレンタイン・デイと呼ばれるようになった。とかくノー天気に成りがちの日本では、好きな人にチョコレートを贈るということで国中が大騒ぎしているが、少し狂っているのではないか。アメリカ辺りではこんなふざけた習慣はないというから、まるで日本人はみんな菓子メーカーの口車に乗せられたピエロだ。まあ天下泰平と言っては言い過ぎだろうか。
こんな浮世離れの現実とは別に、昨晩NHKが深刻なドキュメント番組「北方領土・解決の道はあるのか」を放映していたが、ロシア首脳の北方領土訪問による領土の主権アピールと島民の生活の改善により、かつては日本領だった4つの島が今や現実的にロシア政府に実行支配され、ロシア領土となってしまったかの感がある。
番組を観ていて考えさせられることが多い。日本には2つのグループが厳然としてあることである。ひとつは北方4島全島返還を求める正論派、もうひとつはとりあえず現実的に可能な案として、歯舞、色丹の2島返還、そしてその後残る2島返還を求めて交渉を続ける一派である。
外務省内にも理想と現実派の2つの流れがあるという。しかも、2島返還は1956年の日ソ交渉で決まっていたことであり、他方で4島返還を求める運動に何の進展もなかったことから、日ロ間に平和条約も結ばれず、今では反って2島返還すら縁遠い話になってしまった。
政治家がこれまで何らの行動も起こさなかったことが、領土問題未解決の最大の原因である。言うならば大罪である。4島返還を求める環境の中で、秘かに2島返還交渉へ動いていた鈴木宗男・前参議院議員も、皮肉なことに勇み足で今は獄中に繋がれた身である。ある有識者は、現在政治的には日ロ間は行き詰まっているので、他の分野における対ロ協調、その中でも日本の経済支援、技術支援、環境支援などによって友好関係を構築し、時間をかけてロシアのかたくなな気持の雪解けを待つのが良いと提言する。
前述の通り、政治家を始めとして日本が正当性のある歴史的事実を国際社会へ訴えてこなかったことが、ロシアに思うように行動させている原因であることは論を俟たない。
それにしてもロシアの言う4島は、国際的にもロシア領土として認められているという主張はおかしくはないか。第2次世界大戦の戦利品として、ロシアは北方領土の主権の正当性を主張しているが、日本が降伏した8月15日以降に占領したものであり、いかに国際的には大戦の終戦を9月2日としているとは言え、敗戦国の財産を強奪した、火事場泥棒的イメージは拭えない。今もこの北方問題から逃げ腰のわが国の政治家と外交官は、これまでいかなる志を抱いて一体何を仕事にしてきたのかと問いたい。
こんな深刻なテーマが周りにいくらでもあるのに、チョコだとか、義理チョコだとか少々軽過ぎるのではないだろうか。いい気なものだと思うのは、ひがみだろうか。
さて、69年前の昭和17年の今日2月14日は、日本陸軍がシンガポールへ攻め来み、翌15日払暁に陥落させ、日本中が歓喜に湧き、燃え上がり日本国民が一番一致団結していた1日だった。