栄耀栄華を恣にしてどん底に落ちたかつての権力者ほど惨めなものはない。「奢れる者は久しからず」を地で行っている。エジプトのムバラク前大統領にして然りである。つい1週間前まで国家非常事態下において権力を行使し、国民を弾圧していた独裁者が、今では見る影もない。カイロから逃れてシャルム・エル・シェイクの別荘に蟄居しているが、伝えられるところによると重病説もある。思考能力にも疑問符が付けられている。汚職による不正蓄財で訴追される可能性も指摘されている。一旦栄光の座から滑り落ちるとその権威が失われるのは止めようがない。
チュニジアから始まった長期政権批判による独裁者の追放の動きが、エジプトでも実現されたわけである。これが更に周辺の中東諸国に波及しつつあり、長期政権の独裁者も内心穏やかではないのではないか。すでにイェメンでは現大統領が任期満了を以って職を去ると発表した。現在民主化を求めるデモはバーレーンとイラン、リビアに飛び火している。
バーレーンの如きは国王が実権を握り、産油国としての裕福な財政事情を背景に、デモ隊の生活保護の要求に応えようとして各戸別に約22万円を支給する苦肉の策で逃げ切ろうとしている。加えてこの国には宗派の対立が燻っている。人口の7割を占めるイスラム教シーア派が、政治の実権を握っている同じイスラム教スンニ派に痛めつけられているとの思い込みが強い。それにしてもこれまで強権的に民主化運動に圧力を加え、非難されるや子供騙しの一時金でしのごうとする無為無策のお大尽遊びにつき合わされてきた国民こそ、宗派を問わずいい迷惑で、建設的なビジョンが示されない解決策だけに不満はたまる一方であろう。
日本の政治にも同じようなことが言える。小沢一郎・元代表に対する民主党党員資格停止処分に関して早速小沢グループから反発が表面化した。小沢氏の処分と直接関係があるとは断定できないが、16名の小沢氏に近い衆議院議員が民主党を離脱はせずに党内会派を結成して執行部と対決していくと勇ましい。しかも身内の菅首相の退陣を求めていくという。彼らは全員民主党比例代表区選出の1、2年生議員である。誰のために何のために政治家になったのだと1人ひとりに尋ねてみたい。この間ロシア政府は中国と韓国との合弁事業により北方領土を開発すると発表した。完全に日本政府のぐらぐらした状態を見抜いて北方領土の実効支配を更に強固にしている。軟弱外交の日本はやられっ放しなのである。
この間国内では霧島連山・新燃岳の爆発噴火が続き、その都度地元住民は避難したり掃除したりてんてこ舞いの有様である。更に鳥インフルエンザが各地に発生し、関係者は泣くに泣けない状態で苦しんでいる。
大きな顔をして好待遇を受け、ちやほやされながら内輪喧嘩ばかりして、国民のために真面目に働かない国会議員と、噴火で苦しんでいる牧畜業者や養鶏農家らとの間の格差は、このままにしておいては問題であろう。
今日の唯一明るいニュースは、宇宙飛行士・若田光一さんが国際宇宙ステーション(ISS)の司令官に日本人として初めて選ばれたことである。メデタシ、メデタシ。