ここ数日メディアではパンダが中国からやって来るニュースで持ちきりである。そして今晩2頭のパンダがやってきた。成田空港から実況放送するほどのバカ騒ぎである。聞くところによると、中国からのレンタル料金が10年契約で年間約8千万円、運送費が約4千万円だというからびっくりである。しかも食事代が1日1頭15,000円だというから、2度びっくりである。ここまでして上野動物園でパンダを飼育する必要があるだろうかと考えてしまう。上野商店街では、早くから町興しの起爆剤にしようと周辺住民ともども手ぐすねを引いて楽しみにしている。パンダの経済効果も約200億円と予想されているそうだ。
さて、中東のデモはいよいよ本丸へ迫ってきたという印象が強い。絶対権力を行使していたカダフィ大佐のリビアでも、国内各地でデモが拡大してきた。ベンガジで始まったデモが首都トリポリへ飛び火して押さえつけようとした軍部が発砲し、多数の死者が出た。
リビア、或いはカダフィ大佐と聞くと多少深刻に考えた出来事を思い出す。ひとつは、1973年7月の日航機ハイジャック事件で日本赤軍と別グループが日航機をドバイでハイジャックした事件である。日航機はその後ダマスカスからリビアのベンガジへ着陸して犯人が乗客を避難させた後爆破し、犯人はカダフィ大佐の黙認の下に国外逃亡した事件である。その時偶々アフリカへ出張中でカイロ市内のホテルでベンガジからやって来た若い日本人からハイジャック機の生々しい様子を聞いたことがある。
もうひとつの事件は、1981年9月チャウシェスク独裁政権下のルーマニアに文部省教員海外派遣団の添乗員としてお供した際、首都ブカレストからウィーンへ発つために空港へ向かっていたところ、突然国賓カダフィ大佐が到着したため空港と市内の唯一の道路が一時閉鎖されると検問所で知らされ、一瞬大慌てしたことを昨日のことのように思い出す。結果的に女性通訳を介してドライバーに何とか田んぼ道を案内させて時間前に空港へ辿り着くことが出来て、ほっとした。あの時どんな道でも良いから空港へ走ってくれとお願いした時、当惑した通訳さんがドライバーと相談してわき道であるガタガタの田んぼ道を急いでくれたことで事なきを得たことがある。その時はカダフィ大佐を恨んだものだったが、いま思い出すとわが旅行人生の中でもセンセーショナルな出来事だった。そのカダフィさんの屋台骨もどうやらぐらついてきたようだ。住民に発砲したことは、デモ隊に対して言い訳の出来ない残虐な行為を冒したことになる。もし政権が転覆したら厳しい責任を取らされるのは明らかである。今もリビア情勢は刻々と悪化しているようだ。
いつも思うことだが、こんな時天下泰平のわが日本は、パンダで大騒ぎし、国会は緊迫感もなしに揚げ足取りにうつつを抜かしている。