京都大学、その他3つの私大入試でネット投稿によるカンニング事件があり、受験生はもちろん大学や高校、予備校など関係者、並びに日本中にに大きなショックを与えることになった。それが今日になって急転直下解決した。使用された携帯の持ち主が判明し、その息子である予備校生が今日偽計業務妨害容疑で逮捕されたのである。事件は逮捕された受験生が自ら蒔いた種によって引き起こされたものであり弁解の余地はないが、かつて浪人生活を送った経験から少なからず同情の気持も湧いてくる。
まずこの受験生を叱れ! 受験とは同じ土俵の上で自分の実力を試すことではないのか! 徹底的に反省させよ! そのうえで、まだ若い受験生を極悪人扱いするようなやり方は止めて、彼に立ち直るよう再起の機会を与えよ!
この受験生は今日早稲田大に合格していたことが分った。早大は不正行為が明らかになれば厳正な処分を行うと発表した。
当該の受験生にどうしても同情してしまうのは、2年前に父親が亡くなり、母親に浪人としてこれ以上負担をかけられず、何とか今年中に大学へ入学したいとの強い思いがあったという彼の生活環境と彼の優しい悩みである。それにしても彼が行ったことは、断じて許されることではない。他の真面目な受験生や入試制度の根幹を揺るがすような不祥事である。それでもなお、極悪非道な犯人であるかのような興味本位な扱いはいかがなものかとか、反省したら受け入れてやるべきだとか、温かい同情の声も当然表れている。事件が明るみになってから僅か4日間でこれだけ振幅の激しい両極端の声が出ているのだ。
悪いことは悪い。だが、一方的に決め付けるのではなく、罰を受け反省したら温かい気持で包みこみ、再起の機会を与えてやるのも社会の責任であろう。誤解されると困るが、はっきり言ってタカがカンニングである。今までだってこれに類する行為はあったと思う。ただ、やり方がこれまで以上に影響が大きい方法で、刺激的でみんなが興味を抱いてしまったということが最大の不幸だった。「罪を罰して人を罰せず」という言葉もあるくらいだ。まして、まだ若い青年である。この受験生を追い詰めるようなことだけはしてもらいたくない。
私自身2年間の浪人中は、辛く暗い気持で毎日受験勉強の日が続いた。それだけに罪を犯した受験生の気持は痛いほど分る。こういう現代的な事件は今回初めて表面化することになったが、京都大学・松本紘学長が会見の場で、試験場では監督体制は充分だったと自らの非は一切認めようとしない強気な姿勢は、実際監督体制の不備によりこの種の事件が引き起こされた以上、自らも反省し、正すべきは正し、試験監督の方法を考え直すとの謙虚な考え方にならないと、いずれは同じような事件が起こるのではないかと憂うるのである。
事件を起した受験生に少なからず同情するとともに、守れもしないルールを厳正に守っていると嘯く大学側の頑な背反論理は、ことが教育に関することだけに首を傾げざるを得ない。