今回の地震が「東日本大震災」に決定したことは昨日も書いた。ところがいつまでももたもたして名称を決めなかったものだから、大震災募金として広く募金を集めている新聞社やテレビ局は、銀行口座名を変えるわけにいかず、旧来のままである。従ってNHKの例を挙げれば、放送では正式名の「東日本大震災」に変わったが、口座名は相変わらず「東北・関東大震災募金」のままである。
過去にこれと同じような大事件がある。言わずと知れた先の戦争である。正式な名前はあまり知られていない。一番多いのが「太平洋戦争」で、これは戦後アメリカが「大東亜戦争」の名にケチをつけて、「太平洋戦争」を押し付けたものである。次が「第2次世界大戦」だ。しかし、正式名は「大東亜戦争」で、開戦直後の閣議で決められた。政府が決めてもいつの間にか別の名が1人歩きするということはよくあることだ。
かつて、旧陸軍航空隊の方々とともに東南アジアへ慰霊巡拝に出かける度に、彼らは決まって「大東亜戦争」と言っていた。実際激戦地を一緒に歩いてみると「大東亜」にいるということを実感する。それに政府がお墨付きを与えたわけである。その「大東亜戦争」が、知らないうちに「太平洋戦争」になり、ヨーロッパを主戦場とした「第2次世界大戦」とも呼ばれている。太平洋戦争というのは、対米戦争であり、日中戦争から始まってアジアを主舞台に戦った経緯から考えると違和感がある。「第2次世界大戦」に至っては、とても実感がない。本来第1次大戦の復活戦である第2次大戦は、ヨーロッパに軸足を置いている。これだって世界大戦と呼ぶには些か抵抗があるところである。
ここは私自身の実感からしても、先の戦争は閣議決定の通り「大東亜戦争」と呼ぶべきであると思う。それが今ではてんでんバラバラである。今度の「東日本大震災」だって、よほど「管理」をしっかりしていないと訳の分らない名前に変わるということはあり得る。
さて、その東日本大震災だが、一向に安心できる情報が流れて来ない。米軍と自衛隊が合同で行方不明者を空海から捜索して2日間で50体以上の遺体を発見したというニュースが伝えられた。悲しいニュースのオンパレードで切ない。東電の不甲斐なさに業を煮やしたのか、東電に対する嫌がらせが増えてきたようだ。きれいごとばかりが報道されるが、フラストレーションが溜ると間違った方向に爆発するものだ。
この状況の中で全国的に自粛ムードが広がってきた。特に観光地ではキャンセルに次ぐキャンセルで、ほとんどの観光施設やホテルの経営が成り立ちにくい状態である。これだけ自粛が消費を抑えると本来GDPの6割が個人消費に頼っているだけに、国の景気を大きく低下させることは確実である。派手なパフォーマンスは自粛すべきだが、普通の消費は無理して抑えることはないのではないかとの声が高まってきた。どうも風評というか、考えることもなくひとつの考えが支配するのは考えものである。もう少し智恵を出せないものだろうか。