2月11日の建国記念日に封切りされた東宝映画「太平洋の奇跡-フォックスと呼ばれた男」を遅ればせながらも何とか観ることが出来た。観てみたいと思いながらずるずる時間が経ち、気がついたら日比谷や渋谷の常設映画館ではもう公開されていない。インターネットで上映中の映画館をチェックしてみても、最早あまり上映されていない。何とか錦糸町の楽天地シネマで観ることが出来た。
ところが、上映時間を電話で劇場に問い合わせてみても全部音声ガイドによるもので、相手の希望通りの応答をしないと答えてくれない。マニュアルからはみ出した言葉で応えるとやり直し、例えば「はい」と応えるべきところを「結構です」と応えると、また最初に戻されてしまう。どうにもシステムの効率が悪く、便利なようでいて不便極まりない。機械としゃべっているので感情も通い合わない。合理化だか何だか知らないが、省力化が手抜きになっているだけで不愉快ですらある。機械、映画館、経営者にバカにされているようで、こんな省力化、機械化は顧客に対して果たして親切だろうかと疑問に思う。
この映画館では夕方5時半と8時の1日2回しか上映していない。どうにも時間的に不都合で、3日間悩んだ末に第1回目を観ることにして今日思い切って映画館へ出かけた。今年になって初めての映画鑑賞で昨年は6回も観たのに随分足が遠のいたものだ。
なぜこのサイパン島を舞台にした映画鑑賞に拘ったのかと言えば、玉砕前後のサイパン島の様子が1人の若い陸軍士官の行動を通して描かれていることを撮影段階にテレビで知り、戦時中の現地の様子がどのように撮影されているか知りたいと思ったからである。
サイパン島へは1970年代初から厚生省の戦没者遺骨収集事業に携わり10年以上に亘り毎年のように出かけ、そのノスタルジアもあってサイパン島を偲んでみたかったからでもある。大場栄という1人の日本人陸軍士官をアメリカ人が描いたノンフィクションらしいが、この種の話はあまり聞いたことがない。撮影現場はほとんどタイ国内ということは知っていたが、懐かしいサイパンの風景を見られたのも良かった。
ストーリーとしては、主役の大場栄・陸軍大尉と部下との間で相当揉めたであろう葛藤を掘り下げてお互いの心理面まで抉り、大尉が部下に降伏を説得する愛憎が絡んだ真剣なシーンを、もっと時間をかけてクローズアップした方が追い詰められた双方の緊張感が浮かび上がって良かったのではないかと素人なりに感じた。その点で最後に大場大尉が部下を引き連れ米軍に降伏する、折角のクライマックス・シーンが今ひとつ盛り上がらない原因ではないかと思う。
ロケ地がタイのせいかやはり景色が馴染まないところがあちこちに見られた。タッポーチョ、ガラパン、ススペ、マッピ岬など懐かしい地名も出てきたが、ジャングルはほとんどタイだろうと思う。
それでも封切り直後は観客動員数が凄かったらしい。だが、今日は千秋楽前日のせいもあって、450人ほどの客席数に対して私を含めても中高年の観客がたった10人の不入りだった。映画自体は大満足というわけには行かなかったが、久しぶりにサイパン島で遺骨収集に従事した思い出に浸ることが出来た。まあそれで佳しとするか。
夜11時半を回って突然大きな地震があった。このところ毎日余震があるが、それほど大きくないので気を緩めていたが、久しぶりにドカンとやってきた。青森から茨城まで東日本の沿岸に津波警報が発令された。この調子ではまだ当分落ち着きそうもない。