1444.2011年4月27日(水) 放射性廃棄物の処理を取り扱った映画

 一風変わったと言えば言いすぎかも知れないが、珍しい映画を渋谷の自主上映館のような小さな映画館「UPLINK」で観た。移動自由な椅子席が、その時は約60席ほどだった。先日一部のテレビで紹介され、その翌日日経紙にも紹介された「100,000年後の安全」という奇妙なタイトルのフィンランド作品である。原子力放射性廃棄物を取り扱い、深刻に考えさせる現代人の意表を突く問題作である。福島原発の放射性物質漏洩が世界中の注目を集めているこの時期を狙い、年末公開の予定を繰り上げ今月になって急遽公開上映されたたものである。
 原発から排出される大量の高レベル放射性廃棄物の処理を巡る、気の遠くなるような長いスパンの埋蔵計画を取り扱った作品だ。そもそも10万年もの長い時間をずっと誰の手からも触れられず、外へ漏れることもなく放射性廃棄物を地下深く埋蔵しておこうという奇想天外にも思える実話である。寡聞にして知らなかったが、フィンランド政府はすでにこの計画を実行に移して、工事を進めている。
 フィンランド語で「隠れた場所」を意味する埋蔵地 「オンカロ」は、首都ヘルシンキの西方240㎞のオルキルト島の岩盤の固い地下500mに建造されつつあり、完成は何と100年後だという。この遠大な計画自体は納得出来るにしても、映画の中で訴えているのは、「オンカロ」が10万年後まで誰にも破壊されず、放射能も漏らさず、現代人のメッセージを理解してくれるだろうかということである。われわれ現代人がある程度予測出来る後世の人間の生活や文化は、精々500年止まりで、過去の文化でもそれ以前になると未だに解明出来ないことが多い。ピラミッドにまつわる創世記の文化や建立の目的などは今もって謎だらけである。それを10万年後の人々に埋蔵地の存在と目的、留意事項などをどうやって伝えるのか。果たして危険な埋蔵地があらぬ誘惑に駆られた不届き者によって触れられるようなことはないのか、その辺りの話し合いが単純に続けられるが、これが案外面白い。
 原発問題とこのオンカロを考える知識として、字幕翻訳者でもある須永昌博・スウェーデン社会研究所長が書いた1枚の解説紙が論点と内容を分り易く整理していてかなり参考になる。
 映画の提示するテーマとして、
  ①放射性廃棄物とは何か。
  ②なぜ、フィンランドなのか。
  ③原発に賛成、反対の人々との調整
  ④将来の人類とのコミュニケーション
  ⑤日本ではどうなのか。
 等々を挙げている。
 確かに上記について考えてみると難しいものだ。
 それにしても原子力が人類にとって福音をもたらした一方で、これほど厄介な棘を残したことは、これまであまり深刻に捉えられていなかった。原発は絶対安心であるとの神話に騙されていたわけだ。現状の収束作業を見ていると、とても安心できるものではない。
 この映画はいくつかの論点を提供したと思う。鑑賞に充分値すると思う。今は目前の大事を座視出来ないが、いずれ原発問題については真剣に議論して、わが国のエネルギー政策の方向性を見出してほしいものである。

2011年4月27日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com