朝日新聞社会部OB会が主催する市民講座が亀戸文化センターで開かれたので、期待感を抱いて出席した。昨年初めて外務省機密漏えい事件の西山太吉さんからお話を聞く機会を作ってくれ、その時信念を貫き通す西山さんの姿勢にいたく感銘を受け、とても良い企画だと思ったので今年も案内をいただいて直ぐ参加を申し込んだ。出席者50名ぐらいのうち、そのほとんどが朝日を中心とするジャーナリストだったようだ。
テーマは今世間の耳目を集めている「東日本大震災と福島原発事故を検証する」と題し、朝日のOBと現役がメディアの立場からかなり専門的な話をされた。
講師は現役の尾関章氏、OBの原淳二郎氏と柴田鉄治氏だった。冒頭尾関氏は東海村に初めて原発が稼動した際朝日が「『原子の火』ともる」と社説に持ち上げて取り上げたこと自体が、結果的に日本の原子力政策を後押しすることになったと反省の弁を述べられた。OBのお2人はいずれも東大工学部で学ばれ、原氏は原子工学を、柴田氏は地震学を専攻された専門家でもある。特に柴田氏は海外駐在員としても活躍され、私も随分特派員便りを読んだものだ。朝日を退職されてから子会社社長や国際基督教大学教授も務めたと伺った。
原氏は原子力が安全と言われ続けて、その風潮に反対するのは理論的には無理な環境にあったと話された。今度の事故で反対派が勢いを増すと思うが、推進派と反対派の対立を収束するのは難しいとも話され、特に強調されたのは原発に頼らなくても良い社会を作ることであると話された。ITは電力を消費し過ぎるし、事故は必ず起きる。テロリストによる原発内への侵入などを例に挙げ、脱原発を志向することが必要だと主張された。
津波は想定外ではない。日本は地震国であり、原爆被爆国でもあり原子力について充分な備えをするべきであり、今回の原発事故は想定外なんかではあり得ないと柴田氏は力説された。今度の事故は最初の安全対策がダメだし、テレビ報道などを観ていると全体の司令塔が分らないと手厳しく批判された。メディアが原発のマイナス面を主張しなかったのもメディアの責任であり、所詮原発は廃棄物処理が出来ないことは分っていたはずだと仰った。今後原発の賛否について国民投票まで持っていってほしいと要望された。特に、メディアも国民の胸に沁みるような意見を提案してほしいと結ばれた。
質問などを聞いていると中々原子力全般に詳しく識見の高い人が多く、原発問題について考えさせられる有意義なセミナーだった。原子力について論じる場合、こういうような機会を出来るだけ多く得て、少しでも専門的な知識を身につけておくことが必要であると痛感した。