憲法記念日なのに今年は表立った憲法関連イベントが開かれない。憲法改定と言えば、即ち「9条」問題である。戦争反対、再軍備と来れば自衛隊となる。ところが、今回の東日本大震災の被災地における自衛隊の献身的な支援活動ぶりを見ていると、再軍備反対論者にとっても微妙な感情が流れるのではないか。
しかし、震災復旧が一段落したら、わだかまっている憲法改定問題については、徹底的に議論を戦わし進むべき方向性だけでも示す必要があるのではないかと思う。
今朝の新聞のトップニュースは、昨日報じられたウサマ・ビンラディン殺害事件である。今日凡その全体像が明らかになった。4機のヘリコプターで夜間にウサマ・ビンラディンが潜んでいる建物を電撃的に襲撃したらしいが、どうもひとつ疑問が残る。パキスタン政府に事前通報はなかったというが、建物の周囲にはいくつものパキスタンの軍事施設があるという点を考えると、米軍特殊部隊が何の妨害もなく「ジェロニモ作戦」を実行出来たのは奇跡に近いと思う。秘密裏に事前の通達があったのではないか。
もうひとつ気になるのは、他国における主権の侵害である。アメリカのウサマ・ビンラディン殺害は国際法上認められるだろうかということである。国際法上は認められるかどうかは微妙との意見が強い。国連の旧ユーゴスラビア戦犯法廷で判事を務めた、多谷千香子・法政大教授は今回のやり方を例に、「アメリカにとって危険人物なら誰でも殺して良いことになってしまう」と批判的である。
殺害せずに身柄を拘束して裁く道はなかったのかとの疑問がある。
ところが、驚いたのはこの「ジェロニモ作戦」はホワイトハウス内で、オバマ大統領、クリントン国務長官以下政府要人が作戦実行をリアルタイムで見ていたのである。従って殺害と同時に国民への誇らしげな発表となった。話によれば、拘束しようとビンラディンの部屋に侵入したところ、ビンラディンが手元の自動小銃で立ち向かってきたために特殊部隊が殺害したということが判明した。
近ごろ稀に見る派手な大立ち回りである。昨日ニュースを聞いた時には、ほっとしたと書いたが、冷静に分析すると心情的には私も国際法を犯した気分になっていたということになる。何の同情や慈悲もなく虫けら同然に殺し、情緒的な感情がまったく感じられないとしたら、相手が極悪人だとしても、あまりにも冷淡な現代社会になったということになる。その点では、大震災に付き添うように支援の手が差し伸べられている東日本大震災の情景は救いである。