恩師の飯田鼎先生と最後のお別れをするために告別式に参列した。披露された弔電のひとつに大阪在住のゼミ1期生・佐竹正彬さんから寄せられた、心を打つ長文の弔電があった。佐竹さんの弔電にはありきたりの電文ではなく、我々すべてのゼミナリストが先生を尊敬し慕う気持ちをそっくり表現してくれていた。
花入れで先生の胸元に1輪の薔薇を置いて、じっと安らかなお顔を見つめているうちに思わず涙が溢れてきた。永遠のお別れである。50年間の思い出が胸の中をさっとよぎって行った。火葬場へ向かう先生のご遺体をお見送りしながら、ただ心の中でひたすら感謝の気持ちを申し上げた。もうお会いすることは出来ない。永遠のお別れである。
先生、長い間本当にお世話になり、ありがとうございます。どうぞ安らかにお眠りください。さようなら、飯田先生。
小松先生、島田さん、池田くん、長谷川くん、須藤くん、鈴木くんらいつも一緒の仲間と東武野田線鎌ヶ谷駅前の喫茶店で昼食を取りながら、思い出を語り合った。毎年九段会館で行っていた「飯田会」の今後についてどうすべきか軽く話を交わした。主役の飯田先生が他界されてしまったので、どのように会の存在と運営をやっていくのか難しいところだ。とりあえず来月1日に銀座「ライオン」で話し合うことになった。
さて、今日の朝日夕刊1面トップを見て呆れてしまった。「原発無人ロボ、東電『いらぬ』-JOC事故後30億円で開発→結局廃棄-」である。何だ?これは! 腹が立ってくる。よく読んでみると、原発事故での使用を想定し、国が30億円を投資して開発・製造された遠隔操作ロボットが、出来上がってみると東電など電力会社が必要ないと判断したため、実用化されなかったというお粗末な内容だった。だが、福島原発では作業員が立ち入れないほど放射線量が高く危険な場所で、実際にはわざわざアメリカからアメリカ製ロボットを借りて作業が続けられているのである。
そのロボット開発に携わっていた技術者のひとりは、万一の事故に備えて必要だとのコンセンサスはあったが、肝心の電力会社に「原発で事故は起きないのだからロボットは不要」との考え方が根強かったと語っている。電力会社内には原発事故を話題にすることをタブー視する意識はかなり前からあったとも言われている。ある国立大教授はこうも証言している。元通産省電子技術総合研究所(電総研)に勤務していた時、ロボットの技術開発に関する提案書を書いたところ、上司から「原子力防災」という言葉は使えないと指摘されたという。電力会社のみならず、ロボット開発のための予算を申請した通産省自身が、開発した後でロボットは必要ないと言っているのだから馬鹿げている。こうして国民から税金として搾り取った資金が無駄に捨てられている。
電力業界のこの血迷った体質のせいでロボットは実用化されず、外国から必要なロボットを借り、投資された30億円をドブに捨てたのである。そして、皮肉なことに、今日福島第1原発で作業員がひとり死亡した。まったく人災続きである。ロボット開発計画を放棄した電力会社幹部は、万死に値すると思う。
加えて、東北大震災の死者は、昨日で1万5千人を超えた。この他に行方不明者が、まだ1万人近くいる。まだまだ大震災は終る気配を見せない。