先日の日本旅行作家協会総会後のパーティで近藤聰さんと仰る会員の方から話しかけられ、同姓の誼もあって気軽に60年安保のことなどを話し合った。これで近藤さんとは同年輩だと見当がついたが、その数日後その近藤さんから立派なご著書をお送りいただいた。ワインに関する専門家で興味深いエピソードをいくつも書いておられる。その中でルイ15世と愛人ポンパドゥール夫人に纏わる創作が特に面白い。本書にも近藤さんの垢抜けたイラストが散りばめられワインと旅を取り扱って全体的に洒落た構成になっている。広告会社を経営しながら、今もイラストレーターとして活躍されいくつかの賞も獲得されていることが分った。
その立派な装丁のご著書「極上葡萄酒談義」ではワインに関する薀蓄を思う存分傾けて、これまでの近藤さんの仕事に合せたワインと旅との付き合いが自由に綴 られていて気軽に楽しく読める。しかも海外渡航に制約のあった時代から海外を歩かれ、欧米、アジアで高級ワインを品評したり、ユル・ブリンナーのミュージ カル「王様と私」の最終公演をブロードウェイで観劇してその感想まで書かれている。
奥付にある著者略暦を見ていて生年が私と同じ1938年であることに、一瞬もしやと思った。千葉県の私立市川学園中学1年生の同じクラスに、偶々「近藤」姓が4人もいて、その中のひとりが「聰」であり「節夫」だった。私はその翌年父の転勤で京都市内へ移ったので、お互いにそれっきり会うことも連絡を取り合うこともなかった。
近藤さんの住所を調べてみたら、案の定市川市内の真間 にあった。身体も大きく子どものころと変わらない。そんなびっくりするような思いでお返しにお送りした拙著に添えた手紙の中で、率直に感じたことを書き、 私の知る「近藤聰」であるかどうかを今問い合わせているところである。多分現在の近藤聰さんは、市川中学1年生の「近藤聰」くんに違いないと思っている。 事実とすれば、あれからほぼ60年が経つ。まさに「事実は小説よりも奇なり」を地で行くような再会となる。まあ、どういう返事が届けられるか分らないが、それにしても不思議なご縁である。近藤さんからの返事を楽しみにしている。
今日消費増税についてひとつの方向性が示された。財政赤 字が溜っている上に、税収不足で消費税の値上げが俎上に上がりかけていたところへ、東日本大震災による国からの支出が増えると予測され、消費税値上げへ追 い風かと思いきや、「増税」という言葉を嫌う政治家が選挙民の声を忖度して、消費税値上げに否定的な声を発するようになった。これでは国の台所が火の車に なるのは当たり前である。「復興構想会議」発足直後に五百旗頭真・議長が増税を口にした途端非難を浴びる始末である。これから巨額の支出が予想されるの に、真剣に財源を検討しようともしない。その矛盾に漸く気がついたのか、やっと税制改革へ向けて歩み始めた。
税と社会保障の一体改革を議論する政府の「集中検討会議」に対して、内閣府と財務省が消費増税について報告書を提出したのである。まだ、政府部内にも反対の声があり、現在の5%を一気に大幅に引き上げると経済変動が増幅されるとされ、2012~3年に7~8%、2015年までに10%と段階的な引き上げに落ち着きそうだ。
消費増税に全面的に賛成するわけではないが、このまま放っておくと復興支援を始め国家機能が止まってしまうのではないか。消費税のある程度の引き上げは、現下の状況を考えると止むを得まい。