年齢による老化現象が年々進んで定期的に検査を受けているが、今日は40年 近くお世話になっている歯科へ寄ってから、日本ペンクラブ環境委員会6月研究会へ出席するため茅場町の鉄鋼会館へ向かった。私自身環境委員ではないが、今 回のテーマは今最も関心のある原発問題だったので、ぜひ新情報に触れてみようと申し込んだ。環境委員長は俳優として「木枯らし紋次郎」を演じ、その後参議 院議員を務められた中村敦夫氏であるが、偶々中村氏とは同じ年月にペンクラブ会員になった。
今日の講師はNPO原 子力資料情報室代表・西尾漠氏で反原発の立場から「福島原発震災を『絶後』とするために」と題して話された。日頃より自身編集者である「はんげんぱつ新 聞」を通して意見を発信しておられる。司会進行は中村氏。冒頭挨拶の中で配布された資料のひとつ、グラフ「発電施設の設備容量と最大電力の推移」を手に掲 げた中村氏が、原発がなくても現状では水力と火力発電で消費電力を賄うことが出来ると強調された。これは意外だった。今までは原発がなければ当然電力不足 に陥ると認識していた。必ずしも必要な電力需要に対して安定して供給量が充分ということではないが、こういうグラフは、これまで政府など原発推進派が隠し ていた資料の一部である。最近になって原発推進派にとって不都合な資料や情報が充分公開されていないことが物議を醸しているが、これでは国民を不安に曝す だけではないか。
西尾講師は熱心、かつ懇切にレジュメに則って説明されたが、原子力の技術者でも研究者でないせいであろうか、細部について踏み込んで説明されることが少な かったことが少々物足りなかった。だが、1時間に亘って講義をされ、その後1時間半に亘る質疑応答の中で答えにくい質問もあったので、講師に同情したい気 もした。ペン環境委員会としてこのセミナーを契機に何らかの原発反対に呼応した積極的な意思表示をするというような動きまでには至らなかった。
私の知っている大原雄さんや瀧澤篤朗さん、更に見城美枝子さんらも熱心に質問されたが、私も現在の事故が収束した後の放射性廃棄物の処分について、映画「100000年後の安全」で紹介されたフィンランドの地中深く埋蔵する例と、現在は国際的に禁止されたが、1995年まで行われていた海洋投棄の例を挙げて、今後は原子力廃棄物の処理について国民的課題として広くその存在と処理の方法について啓蒙すべきではないかと質問し、講師の賛同を得た。
原子力に関する情報と理解は、立場によってバラバラのような印象を持っている。西尾講師は、率直に福島原発事故は先が見えないという点で空前の重大事故と決め付けていたが、反面最悪の事態にはならないだろうとの考えも披露され、取りあえずほっとしたところである。
それにしても福島原発事故が収束しないと何とも鬱陶しい気持ちは消えないと誰しも思っている。
今日のセミナーで話を聴いても心の悩みが解決したわけではなく、相変わらず原発事故に対する不安は心に引っかかる。