1485.2011年6月9日(木) 内向き志向の現代若者

 昨夕の日経紙にドイツ文学者の池内紀氏のエッセイが載っている。若者が外国へ行きたがらない傾向を心配して、最近の若者気質にご自分の考えを綴っているものだ。何でも30代 の大学准教授に、今のうちに留学したらどうかと勧めたが、意外な返事が返ってきたと嘆いている。件の准教授はその必要は少しもないというらしい。理由はド イツの文献はメールで送ってもらえるし、雑誌類はPCで読める。ドイツへの旅行は学生時代に済ませたと言ったそうである。ふ~んと考えてしまった。
 池内氏も少々がっかりしたらしく、外国文学を専攻している人間がその国へ行くのは、言葉を学ぶためもあるが、読んだり、書いたり、話すだけではなく、その土地や人や歴史や風土や習慣と密接に結びついているからだとごく当たり前のことを書いておられる。
  翻って若かったころの自分自身を思い起こしてみると、とにかくどこでも良いから外国へ行ってみたかった。それも発展途上の国々へ無性に行ってみたかった。 外国旅行に限らず、今の若者は自分で周囲の溢れるばかりの情報をあらゆる手段で取り寄せ、それを活用することに長けている。そしてそれで満足し充分だと理 解しているようだ。他人から直接情報を得たり、自分の五感で知識を得たり、臨場感溢れる現場で情報を掴みとってこようとの発想はあまりないようだ。
 先日読んだ山口誠著「ニッポンの海外旅行」(ちくま新書刊)によると、1996年には20代若者の海外旅行者は約463万人だったが、2008年には約262万人にまで落ち込むほどの激減ぶりである。実に43.4%も減っている。20代女性は5割も落ち込んでいる。尤も全体の旅行者数、人口の減少などを勘案するともう少し実質的な減少幅は減るが、それでも10余年の間に2割程度漸減していることははっきりしている。
 若者の海外旅行への奨励とその効用については、3月に高校の先輩である、ノーベル賞受賞者・根岸英一博士にお会いした時にもよく話し合い、お互いの考え方に意気投合したばかりである。
 この若者の内向き志向現象について断言は出来ないが、最近の若者には冒険心と自己啓発心が些か欠如しているのではないかと思う。この傾向が続くといずれ四角四面のマニュアル人間ばかりの嫌な世の中になりそうな気がする。
 さて、今日佐賀県玄海町長が、九州電力に玄海原発再開を求める要望を行った。何ゆえに日本国中で原発再開に対する消極的な空気が漂う中で、このような結論を出したのか。
  町長は今日1時間半ばかり玄海原発を見学して安全であることを確認したという。そのうえで、原発再開の要請をした。古川康・佐賀県知事は再開するか否かに ついては慎重で、結論を先送りしている。肝心な町民の気持ちはどうなのか。原発推進か反対かは、どうも原発立地の自治体の泣き所でいずこも頭を悩ませてい る。玄海町の場合だと、今では町民の1割が原発に勤め、町の歳入の約7割を原発に頼っているという。こうなると放射能の心配どころか、原発なしの街づくり が破綻し生活自体が成り立たない。「安心・安全」のお上の説得によって、町に原発を受け入れざるを得なくさせた責任は、国にも、県にも、電力会社にもある のではないだろうか。仮に国として原発停止や廃棄とでもなったら、こういう原発立町はどうやって生きていくのだろうか。その回答を政府は原発を抱える自治 体に示す義務があると思う。

2011年6月9日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com