お祭騒ぎで待っていた「小笠原諸島の世界自然遺産認定」が昨晩遅く決定した。自然遺産としては、2006年 の知床半島に次ぐ登録である。最近小笠原関係のテレビ・ドキュメンタリー放送が多いとは思っていたが、日本中に期待感がいっぱいだったのだ。カラーで見る 小笠原の自然は格別きれいで、世界でも珍しい動植物がたくさんあり、生態学的にも貴重な自然保護区である。陸の孤島のようで、本土からはかなりの距離があ り、それが小笠原独自の種が生育し、保護できた所以である。
諸島のうち最大の父島へのアクセスは6日に一度しか運航されていない船で、乗船客は千人余で25時 間あまりもかかる。この不便さが逆説的に貴重な自然を保護するのに役立っている。かつて屋久島が世界自然遺産に登録された直後に屋久島を訪れたが、ここに は航空路線があり、船も大きなものではないが、頻繁に運航され、観光客が行き易かった。そこに落とし穴があった。大勢の観光客が訪れることにより島の経済 こそ潤ったが、反って貴重な自然が荒らされて、観光資源に傷がついた。
小笠原も屋久島の轍を踏まないよう、ガイド資格にも条件をつけるようだし、空港設置の話も聞かない。周囲の紺碧の海が素晴らしい。何とか智恵を働かせてこの自然を守っていきたいものである。
さて、今日は飯田ゼミの仲間であるチェリスト赤松晋さんが所属する「上野浅草フィルハーモニー管弦楽団」の第50回記念演奏会が東京文化会館大ホールで開かれた。例年2回の演奏会は、地元浅草公会堂で開催されるが、節目の50回ともなると、やはり芸術のメッカ・上野の東京文化会館となる。いつも通り15名ほどの仲間が駆けつけた。会場が立派だとオーケストラも格調高くなるものだとつくづく感じた。
先日赤松さんから聞いたところによると、このオーケストラは芥川也寸志が生前熱血指導され、永年顧問を務め随分思い入れも強かったそうだ。今日も最初に芥 川を偲び芥川の「交響管弦楽のための音楽」が演奏された。次いでマーラーの「さすらう若人の歌」、最後がベルリオーズの「幻想交響曲」だった。いずれも悔 しいが、聴いたことがない曲だ。ただ、マーラーの曲ではバリトン河野克典氏が独唱したので、いつもと変わって興味深かった。
終演に当たり指揮者・河地良智氏が挨拶されたが、3月11日 の東日本大震災以来全員揃うことが少なく、練習も充分できず、一時はこの演奏会も中止になるのではないかと心配したそうである。そのためいつもならアン コールにお応えするところをそれができないことを許してほしいとの話だった。こんなところにも大震災の影響が及んでいたのだ。そう言えば、会館周囲はもと より、内部にも募金をお願いする人たちが大勢いたが、珍しい光景に見えた。
それにしても赤松さんにとって、演奏は楽しくもあるだろうが、練習が大変だろうなと余計な同情をしたくなる。赤松さん、楽しく素晴らしい演奏会をどうもありがとう。