一昨日の小笠原諸島の世界自然遺産登録に続き、昨日「平泉」が世界文化遺産に登録された。平泉は2008年 にも登録申請したが、世界遺産委員会の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)から構成資産の再検討が必要として登録延期を勧告された経緯がある。今回 は前回の勧告を反省し、構成資産を精査して自信を持って再提案した。平泉は京都や奈良と同じようにいくつかの構成遺産を合せてひとつの「平泉世界遺産」と して認められた。今後は浄土思想を具現するものとして、①中尊寺、②毛越寺、③観自在王院跡、④無量光院、⑤金鶏山の5つをセットに、平泉と浄土思想を啓 蒙していくことになる。言うまでもなく平泉は、奥州藤原家の初代平清衡が建立した中尊寺を中心とする街づくりだが、中尊寺と最近観光客の間に人気のある毛 越寺との思想的な区別がよく分らなかった。説明によると中尊寺金色堂は阿弥陀如来の住む極楽浄土を言い、毛越寺は薬師如来が住む浄土を表そうとしたそうで ある。私は中尊寺金色堂しか訪れたことがないが、いずれ平泉の他の遺産を訪れなくてはなるまい。これで私の世界遺産訪問も1つ増え157箇所を数えることになった。
小笠原が自然環境を守ることが難しいと気にしていたが、この平泉も文化遺産とはいえ、今後環境維持と文化的価値のある建物の保存に相当気をつけなければい けない。そうこうしている間に、ユネスコ世界遺産委員会が日本政府に何と「古都奈良の文化財」の主要な資産である平城京跡にある駐車場と仮塀の撤去を求め たことが分った。どうしてこんなことが起きるのだろう。昨年の平城遷都1300年祭用に造られた駐車場が問題視された。世界遺産敷地内に断りなく駐車場を造ってほったらかしている感覚が理解できない。他にも問題が指摘されたが、文化庁のお役人の無神経と不感症にはびっくりする。1993年に日本の世界遺産第1号に登録された屋久島の自然道も荒らされているし、2004年登録の「紀伊山地の霊場と参詣道」の修験者道の杭も木製をコンクリート製に代えてしまった。文化をそのまま大切に保全するという基本的な視点がどうも欠けているようだ。
世界遺産の登録が増えるのは、観光日本にとって追い風となり歓迎すべきことだが、それを管理保全するという考えがないようでは、登録数が増えること自体が反ってマイナスになってしまう。
これは富士山のゴミの管理を見ていれば分かる。日本人は綺麗好きと言われる一方で、場所によってはゴミ大好き人間もいることが分る。