1519.2011年7月13日(水) 朝日新聞、原発ゼロ社会を提言

 朝日新聞社が原発に対する自社の立場と見解を明らかにした。今日の朝刊第一面に原発に関する自社の見解、そして 提言「原発ゼロ社会」を論説主幹の筆で訴えた。提言は「いまこそ政策の大転換を」とアピールしている。日本のエネルギー政策を大転換し、原子力発電に頼ら ない社会を早く実現しなければならないとの主張である。その大きな理由として、止めたくても止められないという原子力の恐ろしさを思い知ったからだとい う。まったくその通りで、科学が作り出した物は、例え発火しても根元を止めれば消化できると信じていたことが、原子力に関してはそうではないと今回初めて 知ることになった。はっきり言ってこんな恐いものは止めるに限る。その他にも地震の巣の上にある日本列島が活動期に入ったということも理由として挙げてい る。
 社説も広告なしで1頁半を使って事細かに訴えている。「脱原発への道筋」「廃棄物の処理」「自然エネルギー政 策」「新たな電力体制」に分けて詳しく解説している。この中で一番問題だと思うのは、最近テレビのドキュメンタリー番組などでもしばしば取り上げられる 「廃棄物の処理」だろう。現状はこの廃棄物処理がかなり多額の費用を使いながら一向に前進していないことである。核燃料サイクル政策に問題があるのではな いか。ひとつは六ヶ所村(青森県)の施設が使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速増殖炉でまた燃料として使う仕組みのはずであるが、度々 トラブルが起きて今なお試運転中である。もうひとつは高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)が1995年 のナトリウム漏れ事故以来稼動していないことである。二つの施設がともにまったく機能していないのである。後者の「もんじゅ」なんか、停止中でも1日5千 万円もの維持管理費用がかかると言われている。国民はこんな無駄遣いをまったく知らされていない。今の原子力政策は一部の人間だけが、国民の税金を無駄に 消費しながらこっそり進めている。みんな金食い虫である。朝日も折角脱原発に踏み切ったのなら、今後はこの辺りの報道に腰を据えて知らせるべきではない か。
 現在稼動している原発からは当然毎日「高レベル放射性廃棄物」が排出されているが、この処分が袋小路に入り込んでしまっているのだ。これをどうするのか。脱原発と並行してこの廃棄物問題も精査し、道筋を決めなければならない。
 今夕菅首相が記者会見で、「原発に依存しない社会を目指すべきだとの考えに至った」と脱原発を表明した。「計画 的、段階的に原発依存度を下げ、将来は原発がなくてもやっていける社会の実現を目指す」とも述べた。朝日と歩調を合わせるような発表である。この首相の発 言自体は評価されるものだと思う。だが、いつもながらの1人相撲の感が拭えない。もう少し閣内で話し合いをしたうえで閣僚の同意を得て発表するという手法が取れないものだろうか。
 海江田経産相との間に齟齬を来たした原発ストレステストの採用辺りから、首相の本音と言動は分かりにくくなったが、側近中の側近と慎重に検討したうえで、腹を固めなりふり構わず押し切ったのだろう。
 朝日が脱原発の見解を表明し、菅首相も脱原発の方向性を示した。
 さて、果たしてオピニオンリーダーである朝日と菅首相の考え表明によって、脱原発が今後原発世論をリードしていくことになるだろうか。

2011年7月13日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com