駒沢大学社会人講座の前期最終回は清田義昭講師の授業である。いつも通りビデオを観て講師から解説してもらった後、問題点や感想を話し合った。今日のビデオはハンセン病を扱った「いのちの格差」という2008年三重テレビ制作作品で、中々の力作である。昨年もハンセン病を扱った作品を見せてもらったが、ハンセン病については近年特効薬の開発により患者が激減して、過去の患者と国との補償問題も解決し表面的にはあまり目立たなくなった。
しかし、ハンセン病患者に対する偏見が消えたわけではない。寡聞にして知らなかったが、北京オリンピック前には中国オリンピック委員会がハンセン病患者 の一時入国禁止を打ち出した事実があった。もちろん中国は海外各国から強い非難と反発を受け、すぐに撤回した。戦前わが国では「祖国浄化」の名の下に、ハ ンセン病患者は軍人にはなれず、社会から隔離され、患者を抱える家族にとっては恥ずべき不名誉だった。
話し合いの中で、僭越ながら私見を申し述べた。戦前軍役に就けず、社会から冷たい目で見られた患者と同じようなケースとして、戦時中、或いは戦後に傷痍軍 人となって帰国した元軍人や、外地で脱走したり部隊が孤立して現地の人々の中にもぐりこんで逃避生活を送り、戦後母国へ復員出来ず家族や日本社会と連絡を 断ち切ったような気の毒な元軍人がいる。特に、ビルマで慰霊祭の最中にしばしば見たケースだが、ビルマ人の中に混じって、遠くから黙って慰霊祭を見て慰霊 祭が終るといずこへともなく姿を消した旧日本軍人と見られる人物についてお話した。清田講師はそんな話を初めて知ったと仰ったが、ビルマだけではなくスマ トラにもいたとお話したら、大変興味を持たれドキュメントとしてテレビで取り上げられたことがなかったことが不思議だと仰ってもらった。
ほぼ脱稿したエッセイ「トラック島の日系大酋長が見せた大和魂と謎」の故相澤進酋長の例とは異なるが、戦争によって環境が一変し生き方がまったく変わって しまった人もかなり多い。当エッセイは相澤酋長と野球解説者・佐々木信也さん、そして森喜朗元総理の交流について書いたものだが、突然森元総理にご不幸が 見舞った。ご子息の森祐喜氏が一昨日46歳の若さで急逝されたのである。地元で記者の質問に対して 森元総理も悲しみを堪え沈痛な表情で応えておられた。5月に佐々木さんと森元総理を議員会館へお訪ねした時、祐喜氏のトラック島訪問のお話も伺ったが、こ の時祐喜氏は健康が優れず入院されていたようだ。何ともお気の毒である。
ちょうど森元総理には前記拙稿の推敲をお願いしているところだが、まだ返送してもらっていないので、そろそろ催促してみようと考えていた矢先で実に間が悪 い。お取り込み中だろうから、しばらく待って来月に入って少し落ち着いた頃を見計らって、秘書に電話で様子を伺ってみようと思う。