中国高速鉄道の事故処理で鉄道省の対応が批判され、実際責任逃れや補償金の増額で遺族をなだめて非難の拡大を抑えようとの対応が事態を一層混乱させて、中国のリスク管理が杜撰であることをはっきりさせた。さらに新たな疑惑も生じているらしい。
ところが翻ってわが国の為政者の国策の進め方と、その対応について胸を張って正しいと言い切れるか。怪しいものである。
今日嫌な「やらせ」が公表された。2007年 に中部電力浜岡原発のプルサーマル導入に関するシンポジウムで、こともあろうにニュートラルな立場で安全チェックをすべき原子力安全・保安院が参加者の動 員、並びに賛成意見を求めるよう中部電力に圧力をかけていたことが判明した。先日の九州電力玄海原発のやらせメール事件と同根であるが、立場が立場である だけにより悪質である。他に四国電力に対してもやっていたらしい。
公共的事業と呼んでもよい電力事業には、どうしても国の立場が反映される。現実には現在の原子力政策推進の考えが全般的に表れるのはある程度止むを得ない が、一番重要な「安全」に関して中立的立場であるべき原子力安全・保安院が、政府側の意見を誘導するようなことがあっては、肝心要の「安全」が骨抜きにな るのではないか。保安院は元々経済産業省に直結する組織だが、このこと自体に無理がある。経産省には原発推進する資源エネルギー庁があり、同時に安全を チェックすべき保安院が原発推進派に転向したら、審判が選手に味方するプレイになってしまう。
結局国が原発推進の方針が決定した以上、経産省は何がなんでも原発推進しようとの考えではないかと考えてしまう。これでは最初から保安院なんて必要ない のではないか。煩い組織や人たちに対して、めくらましを食らわすか、安全重視のポーズさえ取れば良いと考えているように思えてならない。
このシンポジウムにヤラセを知らずに出席していた学者たちは憤慨し、この種のなれあいシンポの開催に疑問を呈している。こと原発に関しては出来レースで事 業の推進を図っているが、経産省の暗躍ぶりから見て、もしかすると原発廃止とか、原発減少は夢物語に終ってしまうのではないだろうかと悲観的にならざるを 得ない。