野田首相は今日多忙の中でスケジュールを差し繰り朝霞へ視察に行った。何を視察に行ったかと言えば、国家公務員官舎の建設地を視察に行ったのである。再三国会でも追及され批判された案件である。
しかし、この視察はどうだろう。この忙しい最中に国のトップが無理をしてまで「たかが」官舎の建設現場を視察するまでもないと思う。写真や資料と充分な説明だけで、ある程度トップの判断は下せるのではないだろうか。例えば、企業の社宅を建設するのにわざわざ社長が現場を見に行くだろうか。大体この案件は一昨年の事業仕分けで凍結と決まったものである。それを首相が財務大臣だった時に、当時の財務省3役が「談合」で予定通り建設しようとこっそり決めて工事に入ったところである。この辺りに情報を公に知らせることなくこっそり事を運んでしまおうとする、役人の狡さと身勝手が表れている。
野田首相は視察の結果、どういう結論を下すのだろうか。じっくり考えて国民が納得のいくよう慎重に判断すると言って判断を示さなかった。野田首相は首相就任早々、いま国家にとって最も喫緊の課題は、震災からの復興と経済の回復だと述べたばかりである。その中で敢えて朝霞へ「たかが」官舎の建設現場へのこのこ出かけて行く必要があるのだろうか。何かトンチンカンな印象が拭えない。どうも5年間凍結の結論という腹を固めたようだ。
これはわざわざ首相が現場に行って決めるまでもなく、局長クラスの視察で充分ではないだろうか。ましてやたった15分間の視察である。こんな程度で建設、否中止の判断ができるのだろうか。往復の時間を合せれば、随分無駄な時間を浪費している。
こんな時にハーバード大学ライシャワー日本研究所長のアンドリュー・ゴードン氏がインタビュー(「選択」10月号)に応えている。日本の首相在位は回転扉のように速い回転だとアメリカで皮肉られているが、それを避けるために任期制にしてはどうかと提言しているのだ。イギリスやドイツのように同じ議院内閣制でも各党が行動原則の明確な政策に従えば、日本のような異様な事態は起こらないはずだと指摘している。外国では日本の首相の腰が定まらないことを皮肉たっぷりに揶揄しているのだ。
異論はあろうが、この際思い切って首相の任期を2年間、或いは3年間の期間に限ってみることも検討してはどうだろうか。