腰が低く周囲とトラブルを起さないよう気配りする野田首相の姿勢が、結論を先送りする時間のかかる政局運営になっている。トラブルは引き起こさないが、事態が中々前進せず問題解決は成らず結論は先延ばしされる。首相は小沢一郎・民主党元代表の裁判についても発言はされなかった。
昨日前田武志・国交相が工事を再開するのか、或いは事業を中止するのか結論が出ないままの群馬県八ッ場ダムの工事現場を視察し、群馬県庁で大沢知事ら地元の関係者と会見したが、工事の再開を求める知事らの早く決断をとの求めに対してはっきりした回答をしなかった。民主党と野田政権の得意技である先延ばしである。
そもそも混乱の原因は、2年前の総選挙に際して鳩山民主党が打ち出したマニフェストに、「コンクリートから人へ」と大見得を切って公共工事の中止を訴え、その後民主党政権になって最初の国交相・前原誠司現党政調会長がマニフェストに沿い中止の線を打ち出してから揉め出した。すでに住民の9割がダム完成を見越して転出し、相当の費用を捻出した後の方針変更、つまり事業中止の決断である。ダムが造られることを念頭に土地の整備やら事業計画を練っていた地元にとっては、恨めしく耐え難い中止の宣告である。それが今日まで燻っている。
前原大臣に続いて国交相に就任した馬淵氏、大畠氏、そして現在の前田氏らが結論を出すことに躊躇している。結局今年の秋までに最終結論を出すと馬淵、大畠両大臣は約束した。だが、彼らは辞めてしまった。困ったのは現在の前田大臣である。言葉を選びながら漸く今年12月中には、工事再開か中止かの答を出すとのニュアンスを口に出した。
確かにマニフェストを作成した頃は、水力発電がなくても原発で賄うとのエネルギー政策だったから、八ッ場ダムがなくても他のエネルギーで補うことができると計算していたはずだ。その目論見は東日本大震災で大きく狂った。原発に替わって他のエネルギー資源を求められるようになっただけに、水力発電への要望は一層高まった。しかも、すでに相当な資金を投入し、工事も半ばにかかっている。これを中止することは難しい。
どうも民主党は積極的に決断を下すのを避けている。揉め事は避けたい、敵は作りたくないとのイージーな気持ちだろうが、決断できないようでは政治家とは言えないのではないか。野田政権の前途に益々暗雲が立ち込めている感じである。