昨日の東京外為市場は円が買われ、史上最高値の1$=75.78円で終った。日本円の価値がまた上がったというより、ギリシャの債務削減を巡るヨーロッパの景気不安に対する反動である。このところ続いている円高相場のせいで、これまで輸出が好調だった日本のテレビ・メーカーが、パナソニックを始め、業界全体が四苦八苦の状態である。実際テレビは韓国メーカーに圧倒され、市場から撤退を模索する日本のメーカーも現れた。欧米の景気が回復しなければ、日本の輸出関連は益々厳しくなるのだろう。
さて、リビアのカダフィ大佐が死亡したことについて、国民評議会のジブリル議長は戦闘の最中に被弾して負傷し、病院へ搬送される途中で亡くなったとの声明を発表したが、外部からいろいろな声が出て、身柄を拘束した時点では生存していたが、反政府軍によって殺害されたとまことしやかな話で持ちきりである。確かにテレビニュースを観る限り、カダフィと思われる人物が傷ついて多くの人間に取り巻かれながらも生存していた様子が写っていた。カダフィの死により、逮捕した後に公正な裁判にかけるということができなくなってしまった。国連人権擁護委員のひとりも、遺体を調べてリンチがあったかなかったかも調査する必要があると述べている。
神経を疑いたくなるのは、カダフィの遺体を冷蔵庫内に安置して、それを外部の人間が見られるような措置を取っていることだ。これなんか、死者に鞭打つ仕打ちではないだろうか。生命の尊厳とか、死者の霊を弔う気持ちがまったく感じられない。
確かに国民を弾圧し、密告などにより国民を恐怖の底へ陥れたために、国民は長い間恐怖のあまり口に出して言えぬことが多かったと思う。だからと言って、仇を討つように感情的に死人に口なしの状態にしてしまっては、公正な裁判で事ここに至った原因や真意が不明なままになってしまう。これでは、また同じような独裁者が現れ、同じような恐怖政治を繰り返さないとも限らない。このまま時代が経てば、闇に葬られて将来、「カダフィの恐怖政治時代」と呼ばれるだけに終ってしまう。証拠品を消してしまっては、中世ヨーロッパを席捲した魔女裁判以上に始末に負えない。
さて、今朝未明大阪府議会本会議閉会後、議会議長に宛てて橋下徹知事が辞職願を提出し、採決のうえ賛成多数で受理された。この後橋下知事は大阪市長選へ出馬する意向である。橋下知事辞任の狙いは、大阪府を東京都に似た大阪都にして、現在の大阪市を東京都特別区に近い形に改変して、現在府と市で行っている二重行政を止めて無駄を省こうというものである。ただ、橋下知事が市長になって大阪都構想が実現するには、あまりに拙速でハードルが高過ぎる。平松邦夫・現大阪市長は真っ向から反対し、むしろ現状のままで大阪府から大阪市へもっと権限委譲をすべきであると主張している。
前知事と現市長、両者が対立したまま、ともに立候補する市長選挙は来月27日に投開票が行われるが、元々目だつパフォーマンスの得意な橋下氏は、知事選には彼が率いる「大阪維新の会」のメンバーを立候補させるつもりである。よく考えて見ればその間大阪府知事が不在になり、この点でも有識者や大阪府民からの批判も多い。民主党、公明党は言うに及ばず、前回橋下知事を擁立した自民党ですら「一緒に改革をしようとスタートしたのに、途中から政治手法が変わった」と憮然としている。
小さな自治体ではないだけに、日本のひとつの縮図と見て取れよう。自信満々の橋下知事にとって知事選、市長選のダブル選挙は果たして吉と出るか、凶と出るだろうか。