1628.2011年10月28日(金) 野田首相の施政方針演説の中身

 トルコ地震による死者が550人を超えた。72時間が生存の可能性の分岐点と言われ、この時を区切りにトルコ政府は行方不明者の捜索を中止すると発表した。だが、その1日後地震発生から100時間以上経ってから18歳の青年が救出されたり、108時間ぶりに13歳の少年が救出されたりもした。72時間で区切りをつけることが果たして生存の可能性とか、生命の尊厳という観点から妥当なのかどうか、もう少し考える必要があるのではないか。
 さて、バンコックの洪水被害は益々深刻になってきた。普段より水位が1.5mも上がっているようで、市内は水浸しの状態である。日系企業の工場操業停止で事業運営に支障を来たす恐れのある、パナソニックを始めとする日系企業では、タイ人従業員を日本の工場で働いてもらうと発表した。タイの工場では日本で作っていない製品を製造しているため、タイ人は日本の工場では日本人労働者を指導する立場に当たるという。受け入れる日系企業タイ人従業員は数千人規模と言われている。早速日本政府に特別ビザの許可を申請すると述べ、それに対して藤村官房長官は特例措置として前向きに考慮すると述べた。
 ところで、日本政府の震災復興に対する動きはどうだろうか。野田首相は今日午後衆議院本会議で所信表明演説を行った。巨額の資金手当てとして3次補正予算の早期成立により復興を加速させると決意を述べた。それに伴い歳出・歳入改革のひとつとして国家公務員給与を削減すると述べた。この公務員給与削減というのが実施できるかどうかが曲者なのである。公務員給与削減については、当然人事院勧告もからんでいると思うが、すでに国会に提出されている7.8%の削減を隠れ蓑に、抱き合わせで60歳の定年退職者を65歳まで延長雇用し、その間在職中の給与の70%を支給するという役人にとって都合の良い姑息な法案成立を併せ企んでいる。直接国民に関係のない事案は、どうも密室でことが成されている印象でどうも不愉快でありすっきりしない。
 その他に政治改革として「1票の格差」是正と議員定数削減について語ったが、いずれも迫力不足で実行できるかどうか怪しいものだ。議員定数削減については、鳩山内閣発足時から言い続け、昨年の参議院選挙でもマニフェストに堂々明記しながら、未だに一歩も前進していない。
 野田首相の演説の中で1番がっかりさせられたのは、沖縄の普天間基地移設問題について言及した一節である。「日米合意を踏まえつつ、沖縄の負担軽減を図ることが基本的な姿勢」と相変わらず抽象的で他人任せの論調である。本当にそう思っているのだろうか。民主党政権が約束を反故にしてから、政府と沖縄県はぎくしゃくした関係にある。加えて野田内閣内でも意思統一ができていない印象を受ける。
  沖縄基地移設にからんで昨夕奇妙な動きがあった。野田首相が鳩山元首相と会い、玄葉外相の鳩山氏への発言を詫びたという。玄葉外相が衆議院外務委員会で鳩山首相が普天間基地移設先を最低でも県外と公表したことは誤りだったと答弁したことに対して、野田首相が鳩山元首相に平謝りだったというのだから何が何だか分らない。これは玄葉外相の言う通り、鳩山元首相の思いつきの発言が間違いだったことは紛れもない。この野田首相の言動から推すと、首相は移転先を鳩山氏と同様に「最低でも県外」と考えているのだろうか。もし、そうなら担当職務が荷の重い大臣なんかに任せず、自ら沖縄関係者に会って「最低でも県外」と確約し、それならどこに米軍基地を移転させるのか腹案を発表すべきではないか。誠実そうに見える野田‘どじょう’首相も、早くもメッキが剥げたのだろうか。

2011年10月28日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com