東日本大震災発生により開幕が遅れたプロ野球も終盤を迎え、今日からセ・パ両リーグともに、いわくつきのクライマックス・シリーズが始まったところである。一方、アメリカではワールドシリーズで今日チャンピォン・チームが決まった。
再三プロ野球界へイチャモンをつけるようだが、このペナントレース後のクライマックス・シリーズほど馬鹿馬鹿しく無意味な勝負はないと考えている。セ・パ両リーグとも優勝チームが決定したわけだから、以前のようにこの両リーグの覇者、セの中日ドラゴンズとパの福岡ソフトバンク・ホークスの間で日本シリーズ7回戦を戦い、真の日本チャンピォン・チームを決めればそれでいい。それが、金儲けと引き換えに優勝の価値と権威を失くす、クライマックス・シリーズというわけの分らないシリーズ試合を加えたものだから、一体全体どこのチームが一番強いのかが分らなくなってしまった。
野球の先進国・アメリカでも似て非なるものではあるが、一応強いチームが大リーグチャンピォンに最も近いところにいる。本当のファンは、ゲーム数が増えたからと言って喜んでいるのだろうか。
メジャーリーグでは、今日セントルイス・カージナルスがテキサス・レンジャーズを降し、4勝3敗の成績でワールド・チャンピォンになったが、このチームは3つの地区のそれぞれの2位チームの中で一番勝率の高いチームが、ポスト・シーズン・シリーズにワイルド・カードという救済制度により出場権を得て勝ち上がり、ワールドシリーズへの挑戦権を得たチームである。その挙句にワールド・チャンピォンに輝いたのだから何をか言わんやである。この変てこなワイルド・カードを勝ち上がってチャンピォンになったチームが近年増えて、1995年に制度が発足して以来17回のワールドシリーズで2位チームが優勝したのは実に5度目だそうである。ペナントレースでは2位に甘んじたが最後に優勝の美酒を味わえることになる。物語ならともかく、本当の実力のあるチームがどのチームなのか分らなくなり、1年間戦って勝ち得た優勝の価値と意味を分らなくしてしまうシステムは、無意味であり勝負の世界では似つかわしくないのではないか。
日本では昨年パ・リーグ3位だった千葉ロッテ・マリーンズが、クライマックス・シリーズを勝ち上がり、日本シリーズでセ・リーグの優勝チーム・中日ドラゴンズを倒して、見事日本一の座に就いた。しかし、その時は運よく波に乗って優勝したが、実力は必ずしも伴っていたわけではなく、その証拠に今年はリーグの最下位にまで急降下した。
一部の狂信的なファンと金儲けのために野球界が考え出した奇策が、これからのプロ野球界の人気を削がなければ良いがと心配になる。実際、近年はサッカー人気に押されて、観客動員数もテレビの放映時間も減ってきているのは、このような安易な制度を採用したことも大きく影響しており、下手をすると大相撲と同じように人気が下降する可能性を秘めているのではないかと、プロ野球ファンとしては嘆かわしく思っている。