1631.2011年10月31日(月) 映画「百合子、ダスヴィダーニャ」を観賞

 今日この地球に誕生した赤ちゃんは、みんな地球上で70億人目の人と数えられるそうだ。これは国連人口基金で承認されていて、その東京事務所では申し出があれば、「70億人目の赤ちゃんの一人」という証明書を発行するそうだからギネスまがいの人気もここまで来たかと、些か脱線気味のお祭行事、名称、タイトル等に辟易する。
 先月17日に映画「百合子、ダスヴィダーニャ」の浜野佐知監督のお話を聞く夕食会にお誘いを受けて、監督から女であることのデメリット、映画界における女性監督の不利、これまでの厳しい歩み等について諸々お話を承った。今朝渋谷の円山町界隈にある「ユーロスペース」へ件の映画を鑑賞に行った。最近の映画、特にあまり脚光を浴びない個人やプロダクションが製作した映画は、かつての華やかな大劇場ではなく、こじんまりとした映画館で日時も限定されて上映されることが多く、上映日数も上映回数も少ない。最近私が観た映画は押しなべて力作であるが、やや深刻なストーリーのため、興行収入を考えたのだろうか大映画会社が配給せず小規模な映画館でこっそり上映されるケースが多い。「ユーロスペース」も建物内に2つの映画館があり、今日観たのは定員91名の小規模なシアターで、午前10時30分だけの1日1回きりの上映である。少々早いが行ってみると観客は20名程度で、年配の男性が多い。
 あらすじは、中條(宮本)百合子と湯浅芳子がレズビアン関係に入った経緯と、百合子と最初の夫・荒木茂との結婚生活破綻の複雑な原因を女性監督の目からねちっこく描いたものである。上映に先立ち、予定にはなかったが浜野監督が登場され舞台挨拶をされた。大阪から新幹線で来たところだと話されていた。監督は百合子がなぜ荒木と別れたのか、別れる必要もなかったのではないかと話されたのは意外だった。というのは、監督は日本社会に昔から根付いていた男社会の風潮を嘆き、それをぶち壊そうとされているようで、先月の夕食会場でも過度なまでに日本男子を攻撃し、愚弄する言葉を発していたからである。
 結局百合子と荒木の結婚生活は僅か5年、湯浅芳子との同棲は7年で幕を下ろした。百合子は後の共産党書記長・宮本顕治と一緒になるため、湯浅と別れた。湯浅と別れる時湯浅は相当荒れたようだ。湯浅が亡くなったのは1990年で、52歳で亡くなった百合子と異なり94歳まで生きた。著名なロシア語翻訳家だったが、残念ながらその訳書を私は読んでいない。しかし、日経新聞日曜版で瀬戸内寂聴さんがつい最近まで長らく連載していた「奇縁まんだら」の中で強い女性として描かれていたのを読んだことがあり、印象に残っている。監督が描こうとしたのは、女性の権利があまり認められなかった時代に、女性だからといって打ちひしがれる弱い女ではなく、風当たりが強かろうと強く生き抜いた女性だった。
 映画の構成はほとんど家の中で語られ、東京と福島だけで行動範囲が狭く舞台が限られていてダイナミックなスケールに欠けて少々物足りない感じもした。2人の著名な女流文学者同士の爛れた関係にスポットライトを当てて、「レズビアン」という特殊なテーマを取り扱ったのでそれも止むを得なかったのだろう。映画の中で百合子の作品をもっと紹介すれば、理解の助けになったと思うが、その点で少々分りにくかったという気持ちが残った。

2011年10月31日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com