昨日のトップ・ニュースは、沖縄・辺野古海岸埋め立て工事の代執行訴訟で、国が裁判所の和解勧告を受け入れたことである。これにより政府は現在進めている米軍普天間基地の移設先工事を一時中止し、解決へ向けて改めて沖縄県と話し合うことになった。
このところ政府と沖縄県は訴訟合戦になり感情的になって双方が背を向けていたが、政府・自民党は沖縄県議選や参議院選を控えて、訴訟合戦は好ましくないと考え、ひとまず裁判所の勧告により話し合いのテーブルに就き、解決への道筋を歩もうとしているように見える。だが、安倍首相は話し合いはするが、辺野古への移設が唯一の選択肢であるとの国の考えは変わらないと言っているだけに、これから双方ともどういう解決策を探るのか気が揉めるところである。
政府はアメリカとの間で移設は2022年にと合意を交わしているだけに、県との交渉が長引けば再び米軍との話し合いもしなければならない。政府としてはアメリカとの約束がある一方で、沖縄県側にも、翁長知事が語っていたように、知事選で公約として沖縄から米軍基地撤去を訴えただけに政府の要望を受け入れるわけにはいかない。
問題が誇大になったのは、2009年第1次民主党政権成立時に、鳩山由紀夫首相が深く考えることもなく人気取りのパフォーマンスのために掲げた「沖縄米軍基地県外撤去」公約にある。鳩山民主党政権には、その信念や実行力はなく、もともと選挙対策のためだけの言葉でしかなかったのである。こうして期待を抱かせて沖縄県民を裏切ることになった。国と県がこれから落としどころをどのように見つけていくのか。沖縄県民の気持ちと立場を考えると、われわれ本土の人間は米軍基地負担をすべて沖縄の人々に押し付けてしまったことに呵責の念を禁じ得ない。
この点で今日「啓蟄」は、冬ごもりしていた虫たちが動き出す時期だが、沖縄県民に対してその他の日本国民は思い切り背筋を伸ばすことが憚られるような気がしてならない。