1678.2011年12月17日(土) 福島第1原発の「冷温停止状態」宣言は拙速か?

 昨日野田首相が福島第1原発のステップ2をクリアした「低温停止状態」に達したと内外に発表したことが、大きな話題を提供し、一部では物議を醸している状態である。今朝の朝日社説では実態は以前と変わっておらず、今後の推移も予断を許さないと決めつけている。

 当初は来年1月中旬にステップ2を終える予定だったが、国際会議で年内完了を公約し、収束を公表することによっていち早く安全性をアピールしたかったのではないかと言われている。

 これまで政府公式発表と東電情報、メディア、専門家の間には事故発生以来情報の行き違いと混乱が数多くあった。政府の原子力災害対策本部では1~3号機の炉の温度は、9月下旬以降100℃を下回り、一昨日時点で38~68℃と報告され、放射性物質(セシウム)の外部への飛散も毎時6千万ベクレルで、事故発生時の1300万分の1にまで減少したと公表している。被曝線量も目標の年間㍉シーベルトを下回って最大で年間0.1㍉シーベルトと、安全数値?であることを強調している。

 だが、われわれはこういう数値をただ鵜呑みに信用するより仕方がないのだろうか。実際はどうなんだろう? 手元にある東京電力が最近株主へ送付した決算報告書、「TEPCO2011中間報告書」を捲ってみると、「原子炉圧力容器底部の温度は、1号機が37℃、2号機及び3号機が69℃となっており、いずれも100℃以下で安定」と東電サイドの数値が記されている。これは11月17日、ちょうど1ヶ月前に書かれたものである。セシウムの放出量もすでに1,300万分の1に落ち、「年間被曝線量は最大で約0.1㍉シーベルトとなっています」と報告されている。昨日発表した数値とほとんど同じなのである。対策本部が昨日国民に発表した数字と、東電がそれより前に株主に知らせた数字とまったく同じとはどういうことだろう。勘ぐれば、2ヶ月前の数値だって同じようなものではないだろうか。何かそこに作為があり恣意的なものが感じられてならない。

 ステップ2終了が、時宜を得た判断だったかどうかは今後徹底的に精査され、議論が交わされることだろう。現在も放射性物質は相変わらず毎時6千万ベクレルも放出されているうえに、水素爆発の不安が払拭されたわけではない。国内では佐藤雄平・福島県知事が冷温停止状態はまだ早いと言っているし、海外からも疑念を抱かれているようで、ドイツ・シュピーゲル紙はこの冷温停止はごまかしと断じている。アメリカのヤッコ原子力規制委員長も事実を究明すべく近日日本へやってくるようだ。

 それにしても、これまで情報が入り乱れたせいか、こと原発に関しては何をやってもあまりうまくいかないようだ。

2011年12月17日 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : mr-kondoh.com