ベオグラードに住む友人の山崎洋さんから大きな封筒に入った手紙をもらった。封筒の中に手紙とセルビアの日本語観光パンフレットが入っていた。日本人バイオリニストとしてセルビアで活動している豊嶋めぐみさんと東江(アガリエ)貴子さんのピアノ伴奏によるコンサートが、いよいよ3月14日にベオグラードで開かれるとの連絡だった。「海ゆかば」の作曲家・信時潔が好きな豊嶋さんへのリクエスト曲として、信時が作曲した慶応塾歌を演奏してくれることになったとの知らせで、私にもぜひベオグラードへ来て聴いて欲しいとの内容だった。信時潔の曲を各地で演奏している豊嶋さんに山崎さんが、塾歌をベオグラードでも演奏してくれるよう個人的に頼んでいたものだ。
山崎さんにはゼミの友人でアマチュア・チェリストの赤松晋さんから塾歌のテープと楽譜を提供してもらい送ったところだ。3年前に信時が生涯を終えた東京・国分寺で、豊嶋さんの演奏を聴いたが、その時は「海ゆかば」をしんみり聴くことができた。だが、残念ながら塾歌を聴くことはできなかった。「海ゆかば」については、慰霊祭などでこれまでにも度々聴いている。やや重苦しい感じがするが、中々良い旋律で心に訴える素晴らしい曲だと思う。尤も詩は大伴家持というのだから、聴いていてしみじみ心に響くのも当然だろう。だが、大東亜戦争への協力の歌と誤解されることもあり、一部地域では演奏を断られることもあるという。
手紙によれば、塾歌は良い曲だそうだが、芸術性の点ではやや問題があるように書かれていた。是非来いと言われても、一寸準備が間に合わないし、現在痔の治療中でもある。彼はセルビアの世界遺産・ストゥデニツァ修道院とソポチャニ修道院を案内してくれると言うが、今回出かけるのは難しいと思う。
シューマン、モーツァルト、バッハの名曲と並んで「海ゆかば」と塾歌が演奏されるようで近くなら何が何でも駆けつけるところだが、一寸今回ばかりは現地へ行くのは諦めざるを得ない。
さて、今日はけたたましかったり、慌しかったり、メディアからのニュースは目まぐるしい一日だった。11日に広島刑務所から脱走した服役中の中国人殺人未遂犯が昨日広島市内で捕まった。凶悪犯で狭い広島市内を逃げ回っていたので、メディアが過剰なまでに反応して大騒ぎだった。逮捕されてやれやれである。刑務所が工事中だったとは言え、その監視体制はお粗末としか言いようがない。加えて直前に監督官庁の法務大臣が、この件ではなく内閣改造で辞めることになったが、これは偶然だろうか。
国際的には、アメリカの格付け会社、S&P社がフランスなどヨーロッパ9カ国国債の格付けを引き下げた。一瞬まさかと思った。これまでフランスの財政はあまり不安視されていなかったと思う。それが、ここへ来て一転危うくなった。フランスとともにオーストリア国債も引き下げられた。危険水域にあるイタリア、スペイン、ポルトガルは2段階の引き下げである。この影響は、外貨稼ぎのドル箱であるアテネのアクロポリスの閉鎖で見学できなかったり、ローマのコロッセオの壁が崩れたり、観光面でも様々な弊害が現れている。この状態が更に進むとユーロ圏の分裂へ発展しかねない。
一体いつになったら、この世界経済不況の状態から脱出することができるのだろうか。暗澹たる思いである。