「選択」3月号には中国関連レポートが大分載っている。主に中国に対して批判的な記事が多い。記事への批判とは別に、その中のひとつを読んで意外なことを知った。今年2月のアメリカ上院本会議で首を傾げるような法案が全会一致で可決された。それは、首都ワシントンにある在米中国大使館の一角をノーベル平和賞受賞者で、獄中にいる反体制作家・劉暁波氏にちなんで「劉暁波プラザ」と改称することを定めた法案である。これを提案したのは、いま大統領選に立候補している共和党のクルーズ氏だそうである。
私が意外に思い驚いだのは、いくらアメリカ国内の土地の一隅とは言え、件の「プラザ」がこの外国大使館内だとすれば、明らかに治外法権が認められている用地内である。はっきり言っていかにアメリカの公権力であろうとも簡単に手出しは出来ない筈である。対中国外交において大きな波風を立てたくないアメリカ政府筋としては、恐らく大統領特権である拒否権の発動により、法案を承認しないであろうが、好奇心を掻き立てる法案である。どうなるのか、興味を持って見守りたい。
さて、昨日国連の女子差別撤廃委員会(CEDAW)は、日本政府に対して女性差別撤廃条約の実施状況を審査するための勧告、及び見解を公表した。
その要旨は3点ばかりある。ひとつは、昨年最高裁が合憲とした「夫婦同姓」について「女性に夫の姓を強制している」と訴えた。第2点目は、国会議員や企業の管理職など指導的な地位を占める女性の割合を2020年までに30%以上にすることを要求した。第3点目は、慰安婦問題の責任を巡る指導者の発言や日韓両政府が昨年12月に結んだ合意は、被害者中心のアプローチが十分とられていないので、被害者の意向を考慮するよう求めた。その他にも付随した勧告条項がある。
これらについては、日本政府がまだコメントを出していないので、論評のしようがない。ただ、わが国は昨年女性活躍推進法が成立して、女性の地位向上へ向けた動きを活性化させようとしている時だけに、これらの指摘をどう受け止め、日本の立場をどう国際社会へ説明し納得させていくのだろうか。
ただ、これらは概ね理解出来るが、これらの指摘の中で必ずしも素直に納得出来ないのは、第1の「夫婦同姓」についてCEDAWが、結婚後妻が夫の姓を強制的に押し付けられているとの指摘は、現時点ではやや的外れだと思う。他の国にも見られるように結婚後、夫妻ともに旧姓をそのまま名乗る伝統の国は数多い。これに対して日本の場合は、法律により夫か、妻のどちらかの姓を強制的如何に拘わらず名乗っている。また、古来から男が家長だった伝統もある。日本の社会では、現在まで一部の例を除き、この旧習を踏襲してきた。必ずしも男尊女卑から生まれた制度ではない。
果たして文化が全く異なる外国人の目から見た「男が女に姓を強要した」との短絡的な見方は、現代の時流に即した自由で公平なものであるかとの見地から見て些か疑問を感じざるを得ない。