今朝の日経紙コラム「春秋」に「GKB47」を取り上げている。「GKB47」とは何だ?人気グループ「AKB48」にあやかったグループかと思いきや、内閣府が自殺対策強化月間のキャッチフレーズに採用した言葉である。GKBとは何だと思ったら、ゲートキーパー・ベーシックといい自殺予防に取り組む人・ゲートキーパーの基礎的視点から捉えた言葉のようである。47というのは都道府県の数だという。何とまあ次元の低い発想だろうか。元々視野の狭い役人の発想というのは、この程度のものなのだろう。もう少しましなことを考えたらどうだろうか。
内外ともあまりすっきりしないニュースが多い。昨日開会した通常国会で消費税増税が議論されることは予想されるが、早くも10%程度の消費税では焼け石に水のような話が出ている。まだ8%、或いは10%の増税が決まったわけでもないのに国民の神経を逆撫でする意見が出ているのはあまりにも無神経ではないか。IMFでも日本の財政赤字を憂慮しガーソン次長が、日本は10%の消費税ではとても追いつかず、もっと増税しなければ先行きが心配と述べている。外からこんな内政干渉的な嫌味を言われる前に、日本の財政当局もしっかりしてもらわなければ困る。
しかし、これだけ財政的に追い詰められているにも拘わらず、これまで無策で押し通してきた政治家と官僚、そしてこれを追及しなかったメディアにも責任があると言える。
そもそも日本の財政状態が外国から懸念されるのは、国の借金が先進国の中でも抜きん出て多いことによる。今年度末の借金残高は1000兆円の一歩手前の985兆円だそうである。当初は今年度中に1000兆円を超えると考えられたが、政府短期証券の発行残高が減少したことと、国債関連費用が減じたことで辛うじて国の借金は1000兆円内に留まった。しかし、来年度には確実に1000兆円を超える。ここまで放置してきた政府政党と財務当局の無策を今更責めても後の祭りであるが、税収が少ないのにそれに見合った支出に抑えられない政治家に最大の責任がある。この責任は誰も取らない。
そう言えば、3日前の本稿で指摘した、原子力災害対策本部の会議の議事録を取らなかった致命的なミスに対して、関係者の責任は問わず、処分も行わないことにしたという。一罰百戒なんて考えてもいないらしい。役人に対してはいつも甘くお目こぼしがあるのだ。まったくこのお役人天国ぶりは止め処もない。
さて、海外へ目を転じると気になるニュースが2件ほどあった。ひとつは、アメリカ大統領選にむけた共和党の候補者選びで、ロムニー氏とギングリッジ氏の激しい鞘当て合戦が露骨になったことで、両者ともに国民にとって許せない利権があったことが暴露された。ロムニー氏には、脱税的な行為があったことである。2010年に約17億円の収入がありながら、法に則った税金を納めておらず、脱税の疑いが浮上した。一方のギングリッジ氏にも2007年サブプライム・ローン破綻の折に連邦住宅貸付抵当公社から多額の報酬を受けていたとお互いに中傷合戦を始めたのだ。
もうひとつのニュースはイラン関連である。EUが打ち出したイラン産原油の禁輸に対して、イランは敵対的な行為であるとEUに抗議し、核開発は止めないと強気の姿勢は崩さなかった。アメリカとオーストラリアはEUの決定を歓迎する一方で、ロシア、中国、インドが懐疑的な声明を発表したことである。
そこで思い当たることがある。ロシア、中国、インドが同調する姿勢は、わが「知的生産の技術研究会」特別顧問を長らく務められ、一昨年夏亡くなられた民俗学者の梅棹忠夫先生が名著「文明の生態史観」の中で仮説を立て持論を展開された「第二地域」に、3カ国とも揃って組み込まれていることが偶然とはいえ面白い。生態史観的にこれらの国は歴史的にも、文明的にも、また社会体制的にも同じように行動すると先生は学術的にも珍しい生態史観を提起された。イスラム圏のイランも「第二地域」に属していることを考えると、この原油問題は梅棹先生が「文明の生態史観」の中で指摘された「第二地域」に属する4つの大国がまったく同じ行動を取ったという観点から考えても極めてユニークで興味深い。