今日の朝日朝刊の一面トップにおぞましい中国ルポが載っている。中国の地方都市で行われている陰険で残酷な人民いじめの実態である。今や民主国家では行われていない、犯罪人?を公共の場でさらし者にして国民への見せしめにする公開処刑の実態である。中国ではまだやっていたのかと思う、非情な人権無視の蛮行である。かつて1960年代「文化大革命」の時代に、中国共産党政府が反革命分子を自己批判させるために、彼ら「罪人」に反省のプラカードを首から吊り下げさせ、手錠をはめてトラックに乗せ、公開の場で「罪人」ではない市民から容赦のない攻撃を受けさせた、中世ヨーロッパで行われていた魔女狩りのようなものである。文化大革命時代には上海市長ら反革命的指導者と刻印された大物を市中で引き回した事件を苦々しく思い出す、あれである。
ルポによると、その当時とは大分様子が変わったようで、政府に楯突いたということではなく、人民が中央政府に県政府への不満を訴えるために陳情に行ったところ、帰って来てから悉く地方当局に捉えられているようだ。中央政府は、むしろこれを禁止しているが、地方の不祥事を中央へ訴えられることに危機感を抱いた地方官僚が彼らを押さえ込むことに躍起となったようだ。因みにさらし者になった市民の首にかけられたプラカードには「犯罪嫌疑人」と書かれ、丸坊主にさせられている。
地方の指導者にとっては、告発人が「地方の政治を紊乱する行為」として指導者たちの悪行を中央政府に訴えることは、自分たちの立場を不利に陥れる好ましからざる行為と考え糾弾の対象に挙げている。とどのつまりは、地方政治の指導者にとっては、周囲から国家にとって好まざる事案が公にされることは出世へ影響すると捉えられているからで、その前に批判を何でもかんでも封じ込んでしまおうと強引な行動に出ているらしい。
よくもここまでやるかと思ってしまう。目覚しい経済成長を遂げ、今や世界の大国として存在感が大きくなった中国ではあるが、周辺諸国と権益を巡るトラブルが絶えず、国内的にも多くの深刻な問題を抱え大人の国へ中々脱皮することができない。
その証拠に国民総生産(GDP)こそ人口世界一の効果もあって、世界第2位にまで飛躍したが、貧富の差が甚だしく一般国民の生活は向上しているようには見えない。国民1人当たりのGDPに至っては依然として世界でも93位に留まっている。更に中国の非民主化度を示したのが、NGO「国境なき記者団」が発表した2011年度における中国の報道の自由度である。それが何と前年からまたまた順位を落とし174位にまで下がっているのである。中国より下位には世界でももはや6カ国しかなく、北朝鮮、シリア、イランなど悪評高い国々しかない。中国が自己主張ばかりせず、謙虚に世界の声にもう少し耳を傾け、国民のことを考え、少しでも民主化へ向けて何でも言える国になってほしいと願うのは、まだ発展途上の中国にとって時期尚早なのだろうか。
今日プレスセンターで2度目の「飯田鼎先生追悼文集」編集会議を開いた。専門家の元日経・黒沢さんも参加したので、凡その編集方針を確認した。どれだけのゼミ会員が寄稿してくれるかが問題である。一応原稿締め切り日を4月末ということを決めた。