先祖帰りというべきか。かつてトップの座にあった者が、再び元のトップの地位に戻る後ろ向きの人事が大組織の中に見られる。昨日発表された人事の中で、首を傾げたくなる2つのトップ交代があった。ひとつは前経団連会長だった御手洗富士夫・キャノン会長が社長に復帰することであり、もうひとつは、日本相撲協会理事長に北の湖理事が復帰するというニュースである。前者の御手洗氏のケースは、いかに過去11年間社長を務めた時の実績が優れた経営者であろうとも、すでに76歳で、退く現社長が70歳というのだから普通の感覚では理解できない。だが、一企業の経営者を外部からとやかく言う資格はないかもしれない。
しかし、公の財団法人日本相撲協会理事長に就くことになる北の湖理事は、まだ58歳とはいえ、かつて10年間の理事長在任期間に、力士死亡事件や八百長事件が発覚して責任を取って辞めた人物である。責任はもう果たしたから解除されたとでもいうのだろうか。元々相撲協会自体、他の一般の組織と違い常識外のことが多いが、仮にも管理能力を問われ責任を取って辞めた人物が4年も経たない内に最高権力の座へ復帰するとは、まったく考えられない。世間一般の常識ではとても理解されないが、そんな正論より北の湖理事長なら自分たちの利益を代弁してくれるという、お相撲さん上がりの理事たちの欲の皮によって、トップが決められ自分たちの思い通りに運営したいという相撲社会の論理が優先したということなのだろう。「相撲社会の常識」が、「世間の常識」を覆したということにもなろうか。
キャノンの場合は、民間会社としてトップが経営判断し責任を問われので、間違った方向に進むとしたら、それはそれで自己責任であり自業自得だが、日本相撲協会は現在内部改革を進めている途上にあり、公益財団認定問題以外にも多くの問題を抱えている。果たして前途に横たわる難問を北の湖新理事長が、現役時代の強さを内部改革で実施できるのか、はっきり言ってこの先祖帰りからは将来の展望が見えない。
今日の朝日夕刊「素粒子」欄にこんなことが書かれてあった。「不祥事の責任とって辞めたトップが返り咲き。ふつうの組織ならあり得ない。それがあり得る相撲協会の不思議」。
今日も中国に関して疑問を呈せざるを得ないニュースが2つもあった。ひとつは、世界貿易機関(WTO)上級委員会が中国のレア・メタル輸出規制をWTO違反と認定したことである。そしてもうひとつは、東シナ海の日中国境海域で中国が独自に油田開発を行っているのが、航空機により確認された。日中両国が話し合いの途中で断りもなしに一方的に開発を進めている様子がカメラに収められた。中国よ、またかという感じである。