東大が秋入学を本格的に検討し始めたと伝えられて、今では秋入学移行を前提に大手企業と就職、採用について具体的な話を持ちかけているようである。1月18日付本ブログでも同じ問題点を指摘した。今朝の朝日新聞によれば、企業側も東大の要望に沿った形で春と秋の採用、或いは年間採用を考えているところが結構あるらしい。朝日は1学年の学生が千人以上いる大学の学長174人に対して試みたアンケートを分析している。最近になって唐突に持ち上がった問題だけに、即答し兼ねている大学が多いようだ。
4月に始まる高校以下の教育時期をどうするかの検討もせずに、そのまま置き去りにして東大を中心とする旧帝大や早慶を含めた有名大学群が自分たちの都合だけを優先させて、議論をリードする形になっては教育界のみならず、大学の中でも反発を買うのではないかと些か心配にもある。東大は今後5年ぐらいの内に実施したい意向のようだが、最初から同調はできないと消極的な大学もいくつかあるようだ。
その中でも東京学芸大学・村松泰子学長は、教員養成を主たる目的とする立場上現状では導入に支障があるとはっきり持論を述べている。帝京平成大学・沖永寛子学長は文科省の見解が出なければ、検討する段階ではないと明言している。
両学長の言う通りだと思う。前回もこの問題に関して文科省の顔が見えないと書いたが、文部行政を司る大本山がこの期に及んでも一向に見解を発表しない。下手に発言して責任を取らされては困るとでも思っているのか、そんなことが怖いのか、これだけ公になった日本の教育行政、更に言えば日本の将来を左右し兼ねない大問題について、国の監督官庁が一言も意見を述べないという、無責任極まる態度はとても容認できるものではない。いつになったら国としての見解なり、考えを発表するつもりなのか。
今のままでは国際化に立ち遅れるからとの理由だけで、一部の大学だけがこの重要な問題を突っ走って決めるべきではない。教育は幼児教育から大学まで一貫して同じ教育期間内に同じ条件の下で行われるべきである。文部官僚を始め、いつもしゃしゃり出て来る政治家文教族までもひっそり鳴りを潜めているのは、彼らに何のアイディアもなく考えることもなく、或いは何らかの思惑があるとしか思えない。いつまでも放っておいては、取り返しがつかなくなることが分からないほど教育関係者の思考力は劣化してしまったのだろうか。