今やお騒がせ国家となったイランが、昨日ウラン濃縮施設の増強や新型遠心分離機の開発、更に核燃料の国産化に成功したと発表した。原子力の専門的な知識はやや疎いが、敢えて私なりの考えを述べれば、欧米諸国が懸念しているように、イランの核開発がまた一歩前進したように受け取れる。これにより欧米諸国のイランに対する警戒は一層強まることが予想される。欧米はイランの核開発が世界平和に不安をもたらすものとして、以前からイランに対して核開発を中止するよう警告を与え、経済制裁を実施していた。しかし、イランは平和利用のための核開発であると言い続け欧米の核開発中止要請を聞き入れようとはしなかった。
ここへ来て突如事態が変わったのは、イランが欧米諸国が経済制裁を止めないなら、ホルムズ海峡封鎖という強行手段も辞さないと打ち出したことがひとつのキッカケとなった。周辺海域は緊張の度合いを深めていった。だが、仮にイランが強硬手段に訴えても欧米との軍事力には、大きな差がある。イランが原油輸出を諦め、彼我の力の差に目を瞑ってまでも勝負を賭けるには、あまりにもリスクが大きい。
ところが、この数日前になってイスラエルが、このイランに対してミサイルによる先制攻撃を仕掛けるとの情報がアメリカ政府の有力筋からもたらされ、俄かにイスラエルとイラン間に戦争勃発の可能性すら噂されるようになった。慌てたイランが核開発の手の内を小出しに見せることによって閉塞状況を打開しようと、このウラン増産態勢の現状を世界に向かって宣言したのではないかと考えている。
折も折イスラエルのバラク副首相兼国防相が日本を訪れ、昨日野田首相と会談した。野田首相はバラク氏に軍事的な対応は事態をエスカレートさせ、危険だと自制を求めたようだ。だが、バラク氏は国際社会が協力して厳しい措置を講じていくことが重要として、イランへの攻撃をやるともやらないとも語らなかった。ただ、日増しに両国間の緊張は高まっており、このまま放置すれば、どういう事態になるのか予断を許さない状況にある。
今夜NHKの単独インタビューに応じたバラク氏は、イランに対して各国が制裁を行うべきで、もしその効果が表れないようならイスラエルとしては先制攻撃も辞さないと過激な発言もしていた。イスラエルにとっては周辺に敵対国であるシリアもあり、ヒズボラが潜在力を有しているレバノンもあり、頭の痛い問題であろうが、世界中に核ならぬ心配の種をまかれても、われわれにとっては迷惑千万でどうしようもない。実に気になる困ったことである。