これまで見学したいと思いながら今日まで行けなかった、日本科学未来館で開催中の「ウメサオタダオ展」を漸く見学することができた。昨年12月から2ヶ月近く開催して明後日でいよいよ閉幕である。今日は予定通り新横浜駅前の城クリニック肛門科でその後の経過を診てもらった後、JR横浜線、東急東横線、目黒線、大井町線、東京臨海高速鉄道・りんかい線を乗り継いで東京テレポートにある日本科学未来館へ出かけた。
梅棹忠夫先生には、私も40年間所属しているNPO法人「知的生産の技術研究会」の名誉顧問を亡くなるまで務めていただいた。文化勲章のみならず、海外の名誉ある称号を数々授与された梅棹先生の業績の中には、言うまでもなく民俗学の分野において独自の視点から鋭く分析した赫々たる成果がある。特に、素晴らしいと感じ入り尊敬の気持ちが沸いてくるのは、民俗学・民族学を専攻されたせいでもあるが、フィールドワークを重視され、ご自身で山野を歩き冒険旅行をしてその体験を学問へ活かすという手法である。自身高校、大学でも山岳部員として多くの登山経験を積み重ねられ、それを梅棹生態史観に集約された。
展示館内には、梅棹先生の研究の足跡が分かりやすくショーアップされていた。多くのコーナーではそれぞれ興味があるものが見られたが、梅棹先生が「こざね」としてカードに書き記した言葉がいくつもあって、それが中々面白い。その中に「ハミダシ」の「こざね」というのがあった。16の言葉があったが、それらは以下の通りである。
*日本の運命、*再編成された文化、*人間疎外論批判、*プライオリティ論(オリジナルの考え方)、*文章論、*国際政治、国際連合、*現在の進行しつつある矛盾の指輪、*権力、*狂気の世界(非合理の世界)、*幻想の世界、*所有権(所有関係)、*小国の思想、*社会ダーヴィズム、*官僚、*戦争と鎖国、*反戦産業論
これらひとつひとつの言葉に意味がある。それは先生の著書、特に代表作「文明の生態史観」を読んでいると先生がなぜこれらの言葉を「ハミダシ」として列記したのかがなんとなく納得できるような気がする。
フィールドワークを殊のほか重視していた先生は、「研究のすすめかた、組織のくみかたなどについての戦略のたてかたを、わたしは探検という実践的行為をとおしてまなんだのである」と言われている。その点ではまったく賛同するものであるが、先生には実践することが信念となっている。その点では、学者の「象牙の塔」を意に介さず、「ハミダシ」に挙げられた「官僚」も実践を伴わないものと昔から考えておられたのだろう。
戦時中にモンゴルへ行き、終戦を迎えた。昭和17年にはポナペ島調査にも出かけ、序にパラオ、トラック、クサイ、ヤルートへも出かけている。ひょっとするとトラック島で幼かったススム・アイザワ大酋長にも出会っていたかもしれないと思うとロマンが広がる。
まだ読んでいない著書を2冊売店で購入した。これも楽しみである。